白い渚 - 正絃社

白い渚

【1970年 野村正峰作曲】

南紀白浜の印象を表現した曲

作曲の前の年、作品講習のため和歌山県を訪れる機会があり、そのあと地元のかたのご厚意で、南紀白浜へ案内していただきました。
この曲は、そのときの印象をもとに作曲したものですが、真夏の陽光明るい南国の海ではなく、初冬の日の暗い海を背景にした哀愁のある作品になってしまいました。
折からの時雨で、旅館の窓には嵐のように雨風が吹き荒れ、海は重苦しい潮騒を響かせていたのもその原因ではあります。
しかし、古代から牟婁(むろ)の湯として知られた白浜温泉。ここで私はまず、万葉集に残された、有馬皇子の悲しい愛の歌と物語を思わずにはいられなかったのです。

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