お便りより ~うたまくら335号より  - 正絃社

お便りより ~うたまくら335号より

お便りより

拝啓・・・(前略)このところ、こちらでも感染者が増え、開催も危ぶまれて参りましたが「まちかどコンサート」に向けて練習を重ねております。 
 昨年は全てのコンサートが中止や延期になりましたので、知らず知らずのうちに自分にも生徒にも、どこかお稽古に甘さがあったことが、今回のコンサートの練習に取りかかってみて、初めて解りました。
 他人様に聴いていただく発表の場が目前にあることで、子どもたちから大人まで、曲に対する取り組み方が各段に違ってまいりました。
 プログラムの第1番は「絵日傘に寄せて」。
 幼児と小学四年生の姉の二人が歌を歌いながらの合奏は、歌詞そのままに雅びな雰囲気です。(ちなみに私が子どもの頃は、絵日傘を日常に使っておりました。)まだちょっとドキドキするのは、曲の出だしの「トンツルテンツルツルテツテン」の2回繰り返しのフレーズが、1回で次に飛んだり、3回繰り返したりと定まらないことです。
 小学一年生一人・四年生二人の三人で弾く「南の島のうた」は、とてもきれいな合奏になりました。聴いていると、コロナ禍を忘れてしまうような楽しい曲で、心浮き立つ編曲に希望が湧いてきます。
 「みなかみ詩情」では、奥入瀬渓流の景色が思い浮かび、清らかで優しく、時に激しい高校一年生の二人の力演です。
 野村正峰先生作曲の「炎」は、永田さんと稲葉遊山さんが試行錯誤を繰り返しながら、ふとした瞬間に燃え上がる情念の炎を表現できたら、と頑張っております。
 そして、思いのほか苦戦しておりますのが、「編曲長唄元禄花見踊」です。
 とても華やかで大好きな曲ですが、曲の持ち味である緩急のタイミングがなかなか揃いません。合奏練習あるのみですが、教室は十人も入ると、ソーシャルディスタンスどころではありません。今日は三絃とお箏の1パート一人ずつとか、次はお箏パートのみとか、また今日は十七絃が入るとか、悩みながらの合奏練習です。
 実は、馴染み深かった「元禄花見踊」の曲が元禄ではなく明治時代に作曲されたということも、祐子先生の解説文で初めて知りました、
 「華やかな元禄時代は良かったな」と思う心が、「マスク無しで誰とでも自由に話ができたコロナ禍前は良かったな」と思う心と一致して、曲に特別な親近感が沸いて臨んだのですが、譜面通りに弾ければ良いという曲ではありませんでした。大曲でしたが、頑張ります・・・(後略)
(岐阜市・栗山美智子)

 

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右側・栗山美智子さん  

 

~後日のお便り~
 〇月〇日、教室で窓を解放して「編曲長唄元禄花見踊」の合奏を練習しました。あと1週間先が本番で気合いが入り、はぎれの良い迫力ある仕上がりになりました・・・が、主催者側から、感染拡大により「まちかどコンサート」中止の連絡がありました。
 すべての準備が完了してからの中止は、本当に辛かったです。夏休み返上して頑張った子どもたちが不憫です。またまた感染者が増えてまいりました。どうかご自愛くださいませ。

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