各地の活躍 ~うたまくら347号より - 正絃社

各地の活躍 ~うたまくら347号より

各地の活躍

「50周年アニバーサリーコンサート」を終えて  野崎 緑

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「ありがとうございます」
 今、この言葉を何百回、何千回言っても足りないほど感謝の気持ちでいっぱいです。
演 奏会を開催すると『皆様のおかげさま』を心底、実感いたします。なぜなら、演奏会の開催には多くのお力添えが必要です。舞台の楽器転換、進行、調絃、MC、受付、会場整理、着つけ、ヘアーメイク、そのほか飲食の準備など、出演者を陰から支える多くのスタッフの方々のおかげで運営が成り立っています。
このような裏方に正絃社幹部、ボランティア豆の木、ご父兄、着付けとヘアーの美容スタッフはじめ多くの皆さんのお力添えでコンサートを実現することができました。
 当日を振り返ってみると、会館入口が9時に開き、準備と舞台リハーサルの慌ただしい中であっという間に時間は過ぎ、13時開場から16時終演まで、出演者22名、スタッフ29名の総勢51名が、演奏会の進行台本をもとにそれぞれの部署で動き出しました。
 実は、前回の「40周年記念コンサート」では 客席のお客様が溢れてしまい会場整理が大混乱したという、申し訳ない後悔がありましたので、今回は座席を確保するために《全席指定》という決断をいたしました。そうしたところ、公演一ヶ月前には入場券が完売となり〈キャンセル待ち〉の方が出てしまい、やはり申し訳ない気持ちが残っておりますが、どうか、お許しください。
 さて、オープニングは「編曲長唄元禄花見踊」(野村祐子編作曲)。尺八は野村云山さん、各パートのソロを我が社中の皆で分担し、緊張感の中、皆の心一つに華やかな幕開けとなりました。 
 プログラム2曲めは「証城寺のスケルツォ」 (江戸信吾作曲)。倫子先生に十七絃に入って頂き若手で編成したメンバーです。リズミカルでパワフルな合奏です。
 3曲目は小学生から高校生のジュニアグループ6人と云山さんの尺八。振り袖姿も艷やかに 「空と海と太陽と」( 野村祐子作曲) 。
 4曲目は祐子先生の最新作、画期的な題名の「パンドラ」です。三絃独奏に祐子先生、尺八は峰山先生。我が社中独自の振付け(?)を少し入れて「聴く」だけでなく「見る」演奏に仕上げました。

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「編曲長唄元禄花見踊」

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倫子先生とともに「証城寺のスケルツォ」

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振袖もあでやかな「空と海と太陽と」

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斬新な作曲「パンドラ」


 ここでしばしの休憩時間。
 後半の始まりにはMC担当《社会人落語家》の津島家寿芸虫さんの登場、得意の小咄で会場を温めていただき、その流れに乗って演奏するのは「兎と亀」。油断は禁物という教訓にもなる、皆さんよくご存じのお話です。

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津島家寿芸虫さん

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見た目も愉快な「兎と亀」


「兎と亀」が実は、祐子先生と私のエンターテイメントの真骨頂、というと何だか大袈裟ですが、これまで多くの場で演奏した曲。イベントでの演奏を手始めに、東北の合宿、大阪では地唄舞・山村流襲名披露の会で演奏させていただく光栄にも預かり、海を越えてスリランカでも演奏した経験豊富(笑)な曲です。
 そして予想通り、工夫を重ねたかぶりものと演技の三絃二重奏で、客席の皆さんに大いに笑っていただきました。(コンサートで笑うなんて不謹慎と思われた方もあるかもしれませんが、楽しんでいただきたい、という一途な気持ちをお汲み取りください。)
 演奏後の祐子先生へのインタビューでは、
「私の母はとても器用で、この『兎と亀』の衣装も母の手作りです。」
 寿芸虫さんの返し言葉は、
「ホ~、それで祐子さんという素晴らしい方もお作りになった・・・」
そこでも受けたようです。
 さて6曲めは、いよいよ今回のための新曲初演「緑玉石(エメラルド)の雫」。50周年の記念に思い切って祐子先生に新作をお願いしたもので、これがかねてより夢の一つでもありました。
・「野崎緑委嘱により作曲」と楽譜に記されること。
・二人の娘(綾と亜子)と演奏できること。
 この夢の実現に、これまで長く続けてきてよかったと実感しました。
 続いての曲は、メインゲスト家元ファミリーによる野村正峰先生作曲の「わだつみ」。
 第1箏祐子先生 、第2箏には尺八ばかりでなく箏の演奏姿も凛々しい幹人さん、十七絃に倫子先生、尺八は峰山先生。ベストメンバーの演奏陣に安心して正峰先生ワールドに浸れます。何と言っても正絃社の原点・正峰先生大好き!  

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新作「緑玉石の雫」

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全員のフィナーレ「ふるさと21」

 そして、人間国宝・野村峰山先生の尺八独奏「甲乙」(山本邦山作曲)。
 スポットライトの中、 尺八一本。立ち姿も美しく、尺八の音色に魅了され、満場のお客様が 静まりかえりました。日本一の音色です!
 その後の幕間には、私が9歳で入門してから何十年にも渡って育てて頂いた師匠・秀子先生への感謝の気持ちを伝えることができました。 
 そしてフィナーレ曲は、倫子先生の御夫君である水野利彦先生編曲「ふるさと21」。皆さんご存知の「故郷」のアレンジは、舞台での演奏に加えて出演者全員が合唱に参加し、会場のお客様の歌声も巻き込む大合唱となりました。
 幕が降り掛かったその時、お客様から自発的な「アンコール! アンコール!」の手拍子が沸き上がりました。その声に降りた幕がまた上がり、(密かに予定していた)アンコール曲は、祐子先生編曲の「炭坑節」。賑やかな歌と手拍子で出演者、 スタッフ、お客様の総勢四百人が再び一つになった感動の瞬間、心が熱くなりました。            
『夢は叶う』 を信じて、また新たな夢に向かっていこうと思います。
 祐子先生初めご出演頂いた先生方、関わって下さった全ての皆様、そしてお客様、誠にありがとうございました。

 

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第45回都山流尺八定期演奏会     
 令和6年9月29日(日)、ウインクあいち大ホールでは、都山流愛知県支部による右記演奏会が開催され「本曲八千代」「平調蹴鞠の調べ」など尺八曲のほか、正絃社から「編曲長唄元禄花見踊」、特別ゲスト野村峰山による「本曲慷月調」「鳰の海に」が演奏されました。 

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