【353号】新たなる目標に向かって - 正絃社

【353号】新たなる目標に向かって

新たなる目標に向かって    野 村 祐 子

 新年度が始まりました。
 1月は早々の熱田文化小劇場にての新春コンサートに続き、正絃社幹部会新年会、愛媛県三曲協会での作品講習会、2月には米原にての邦楽専門実演家養成事業演奏会、3月は都山流愛知県支部新年初吹会、あれよあれよという間にもう4月、新学期を迎えました。
 そして、少々気が早いのですが、来年(2027)は野村正峰生誕百年の節目の年になります。生誕九十周年の折には〝創造のDNA〟と題するコンサートで野村正峰作品とともに、野村峰山、幹人、と私の創作を並べたプログラムでした。
 邦楽への理念を持ち、創作に励んだ父・野村正峰の志は、名古屋の舞踊大流派・西川流お家元の言葉「伝承なくして創造なし、創造なくして伝承なし」に相通じるものがあります。

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熱田新春コンサートフィナーレ

 日本の伝統文化である邦楽で今、古典と呼んでいるものも、創られたときには新作です。
 現代のような記録方法のない時代、曲は人から人へと伝えられました。中には消滅した曲もあり、また新しく作られて伝承され、現在の私たちはその伝統を引き継いでいます。
 世界の歴史を見ると、政変のある国では、それ以前の伝承文化や貴重な文化財までも破壊されて、伝統が途絶えてしまうことがあります。伝統文化が現代に繋がっているのは平和な国の証拠でしょうか。戦争のない世界になることを祈ります。
 日本は島国で周りから孤立した地形なので、時代が変わっても独自の文化が遺されてきました。邦楽もそのひとつです。ところが実は、日本民族は新しいものを吸収する意欲に富んでいて、古くから大陸文化を吸収し、それを発展させてきました。ことに明治文明開化の時代には西洋文化の影響を受けて新しい分野が広まりました。箏曲では明治新曲と呼ばれる新しい感覚の作曲、それに続いての新日本音楽など、伝統は常に新しく創られて現代に繋がっています。
 父・野村正峰も、戦後、荒廃した日本の伝統音楽の復興を目指して新しい箏曲創りに邁進してきました。私たちが今、こうして箏を楽しく弾けるのも父の曲があってこそ、楽しい曲がたくさんあるので箏を続けられました。

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初代家元野村正峰


 昭和から平成、令和へ…、多くの災害ことにコロナ禍で令和の時代は社会も変わりました。  
さらに世界ではウクライナや中東の戦況、アメリカの情勢に、私たちの日常生活も穏やかではありません。戦争は絶対にしてはいけないことです。
 しかし、社会が変わっても、すぐには変わらない人の心や感性もあります。困難な状況でも助け合い、励まし合うニュースに人の心の温かさを思います。はやく平和な毎日になるよう、祈っています。
平和にお稽古ができる有難い毎日のなかで、振り返ることの多くなった年代ではありますが、これまでの経験を土台にお稽古の効能を並べてみました。
・お稽古はリハビリ
 ふとしたことで身体のあちらこちらに故障の多くなる年代。右手親指がばね指で手術をされたかたでは症状にもよりますが、お箏を弾くのが楽になったと喜んでいらっしゃいますが、指先を動かすことはよいリハビリ。ことにトレモロやトリルなど小刻みに指を動かす手法は、指を動かすためによい刺激になると、根気よく練習されています。無理せず続けて効果が出ますようにと見守っています。
・お稽古は老化防止
 私が指導している文化センター教室では年齢を重ねた方も少なからずいらっしゃるのですが、お稽古熱心なばかりか、お喋りも達者。年齢が上がると外出が億劫になるので、足腰を鍛えて出かけること、声を出すこと、人と会話をすることが老化防止の秘訣ですよ、と心がけていらっしゃいます。楽譜を読んで理解し、新しい情報を頭にいれることが脳の活性化になるというので、次々に新しい楽譜に挑戦されています。

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懇親会も頭の体操


・こまめな体調管理
お稽古を続けるためには、健康で病気をしないこと、また体調が悪いときには無理をしないこと。医者通いには煩わしいこともありますが、病気の早期発見も大切です。自分は大丈夫と過信しないで、普段から体調管理にも気をつけていきましょう。
・音楽は心の豊かさ
 音楽は感性を豊かにし、知識教養にもなり、心の癒しになるもの。正絃社の作品には歴史や文学、地域を取材したものや、四季折々の自然や愛唱歌、民謡、クラッシックなど幅広い題材をもとにした曲が多くありますので、お稽古するときに曲の内容から話題が広がります。題材になった地を訪ねることもあります。
父が存命のころは、地方での演奏会や講習会の折に、「せっかくここまできたのだから、足を延ばして寄って行こう」と皆を引き連れ、作曲の題材となった地へ旅行したものでした。
「夏草の賦」「遥かなりみちのく路」「阿蘇讃歌」「長城の賦」「北の古都」「観音の里」「やまなみ」
「岐山頌」など、挙げればきりがありませんが、演奏するたびに楽しかった旅の思い出と相まって、演奏もいっそう感慨深くなります。

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秋田・大潟村を訪ねて

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憧れの中国旅行・碑林観光

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当時発掘された兵馬俑を見学

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岐阜観光

「見聞を広め、いろいろなものに感じて豊かな心が育つ」と父は考え、私たちにいろいろなものを見せたり経験をさせてくれたと思います。
 ただ箏を弾く技術を磨くばかりではなく、音楽にまつわる社会生活によって人の心を豊かにすることが、社会における芸術や文化の大切な役割であると思います。
皆様の役に立つ作品を作り、演奏を広め、お稽古を楽しめる指導を目指して、前を向いて進みたいと思います。

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