たまゆら
【1971年 野村正峰作曲】
「たまゆらの露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風」 春に母を失った藤原定家(1241夜・80歳)は、その年の秋、野分(のわき)の吹く頃、以前に母と共に住んでいた家を訪れてこの歌を詠みました。
(新古今和歌集・巻第八) はらはらと露のようにこぼれてとどまらぬ涙、 静かな、 深い悲しみがひしひしと伝わってくる歌です。
この歌への共感は、ちょうどその頃、仕事に追われていた私が、敬愛していた人の臨終に居あわせることができなかったことで増幅されました。
何ものかに託し、その心情を叙べたいという想念がこの曲になったともいえましょうか。
挽歌です・・・。