各地の活躍 ~うたまくら322号より - 正絃社

各地の活躍 ~うたまくら322号より

各地の活躍

 

第22回岐阜正絃社定期公演の舞台より

4月22日、岐阜市文化センターにて開催された岐阜正絃社定期公演の舞台をご紹介いたします。 

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・縁

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・いつしか時は過ぎゆきて

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・葡萄の樹のかげ

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・月の船

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第22回岐阜正絃社
定期演奏会に出演して  武藤真由美

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・白銀の神殿

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・千代の華

 朝から日差したっぷりの好天に恵まれた、4月22日、お家元ご一家をゲストにお迎えし、岐阜市文化センターにて、岐阜正絃社第22回定期演奏会〝箏のしらべ〟初代家元野村正峰を偲びて~いつしか時は過ぎゆきて~が盛大に催されました。
 今回の私の出演は、「白銀の神殿」と「千代の華」。とくに「白銀の神殿」では、作曲者の野村幹人先生に尺八で加わっていただき、一段と緊張を感じる舞台でよい経験になりました。この曲は、昨年11月、しらかわホールでの〝創造〟のDNA―和楽の響きコンサートにて拝聴させていただいたのですが、その時の印象では、曲の全体がベールに覆われているような、ふんわりとしたイメージでした。新作ということで、1月末に楽譜が届くのを待ち、早速、私のパート〈第2箏〉の譜読みに取りかかりましたが、どんな曲か、メロディーはどのパートにあるのかなど、興味津々で練習を始めました。 
冒頭の部分は、ピアニッシモのピチカート、途中七拍子に少し戸惑い、最後は三拍子になり、第二箏パートは伴奏型の分散和音。この曲の中では、比較的分かりやすいパートかなと思いながら、読み進めていきました。
 2月に入り、合奏練習が始まると、テンポ、リズム、拍の取り方(特に七拍子)、強弱など、とても難しく、なかなか曲になりませんでした。
4月までに仕上がるのか、不安と焦りを感じる中、他のメンバーの熱心な取り組みの姿勢に刺激され、繰り返し練習してなんとか仕上げなくてはと、自分に言い聞かせ、月2回の合奏練習に参加。作曲者の幹人先生ご本人から、強弱や曲のイメージについてご指導を受け、自分の中で整理しながら覚えていきました。
 そして、あっという間に迎えた当日、無我夢中で本番を終え、自分では、まだまだ十分満足できる演奏ではありませんでしたが、聴いてくださった方からは、「幻想的な曲の雰囲気が伝わってきて、とても感動した。」
と感想をいただき安心しました。
 無事に定期演奏会が終わり、ほっとしたのも束の間、2か月後にもう一度、この曲を演奏することになりました。なんと、ローカルですが放送の収録です。せっかく戴いた機会ですので、もう一度曲と向き合って自分なりの理解を深め、この曲の魅力をより皆様にお伝えできる表現力豊かな演奏を目指して、練習を積み重ねたいと思います。
 ご指導いただきましたお家元はじめ先生方、応援いただきました皆様、ありがとうございました。 

(小島君代門下・師範・大垣市)

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第22回岐阜正絃社
 初めての演奏会  富岡小学校六年 村井一斗
 
 僕がお琴を習い始めて、たった8ヵ月後に演奏会に出るなんて思ってもみませんでした。
 演奏する曲が決まってからも、僕は家であまり練習しませんでした。なんとかなるかなぁという気持ちでした。
 お稽古の日、練習していない僕は、まちがえてばかりで、とうとう先生に怒られてしまいました。いつもはとてもやさしい先生なので、その時初めて家でもちゃんと練習しようと決めました。
 それからは、学校から帰るとまずお琴の前に座りました。お母さんにも一緒に合わせてもらってひきました。自分の演奏をゲーム機に録音して自分で聞いてみたりもしました。夜、お父さんが帰って来ると今日の練習の成果を見てもらいました。
 ちゃんと練習を始めてからは、先生はいつも『上手になったね』と、ほめてくれました。
 そして、もっと上手にひけるこつを教えてくれました。
 迎えた本番、舞台に上がり、この暗い会場でひくのか!と思ったけど、スポットライトがあたって、僕の初舞台が始まりました。
 
09 warabe童曲演奏の子どもたち

 清流マラソンを走りきってから会場にかけつけたお父さんにも、僕の舞台を見てもらうことができました。
「初めての演奏会なのに、堂々と上手にひけたね」と言ってくれたので、とってもうれしかったです。
 僕はこの演奏会で素晴らしい経験ができました。     

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琴・三絃・尺八コンサート
   風にのって~春の宴~

4月30日、刈谷市総合文化センター・アイリス小ホールにて、関西より小田 誠(箏・十七絃)、山本玉山(尺八)両氏はじめ、若手の尺八演奏者をゲストに迎えて開催したコンサートは、会場から溢れるほど満席の観客に恵まれ、盛会に終演しました。

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・ゲスト小田誠氏との「龍言」

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・尺八・山本玉山氏との「春風の刻」

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・伊佐治美和子社中「月に寄せる日本のうた」

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・野崎緑社中「ふるさと21」フィナーレ

 同ホールは、昨年「創造のDNA―和楽の響き」を開催したしらかわホールのように、幕のないコンサートホールのため、舞台転換にも工夫を凝らした企画。開演から終演まで3時間半の長丁場にも拘わらず、音楽の楽しさで最後まで飽きなかったと、大好評のコンサートになりました。
客席からの声を掲載いたします。

・昨日は大変盛況な演奏会おめでとうございました。緞帳のないホールでも趣向を凝らして、幕間もとても楽しませていただきました。3時間半が、あっという間に過ぎていってしまったようでした。(半田市・Tさん)

・先回の演奏会、とてもよかったと思います。
邦楽演奏会を現代風に変える工夫に感動しました。現代の習い事は、手軽、簡単、安上がりがキーワードになっており、社会は高齢化、核家族化、スマホなど手軽に楽しめるゲームの普及、定年の延長、経済の低迷など、いろいろな要因で、伝統芸能の状況は悪化して、発表の機会も少なくなってきていると思われます。こうした中で、正絃社の姿勢は時勢に乗るもので、今後の成果が期待できると信じております。また聴きたいと思います。(豊田市・Nさん)

・三時間半、たっぷり大好きな箏曲を味わえて、贅沢な時間でした。お誘いしたママ友もお知り合いの方々が演奏されていたようで、喜んでいらっしゃいました。先生自らアナウンスされていて、演出もお茶目で可愛かったです。(安城市・Kさん)

・昨日は、大変楽しいコンサートを見せていただきありがとうございました。邦楽のコンサートであんなに笑ったのは初めてでした!(春日井市・Yさん)

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~音と語りに酔いしれて~
  未来(あした)に花咲くコンサート   栗山美智子

 愛知県犬山市から江南市駅前へ拠点を移して箏曲教授活動に取り組まれている、鈴川悦代大師範主催の表題のコンサートが、6月10日(日)、「永正寺ホール蔵」にて開催されました。
ゲストに家元野村祐子先生、野村峰山先生、友情出演に正絃社本部・石原未祐己講師、そして春日井不二太鼓師範・山川慎平氏を迎えての圧巻の演奏は、「良かった。素晴らしかった。」などと言葉に出したら、その臨場感が消えてしまいそうで、心の宝物として永遠にとどめておきたいと思うコンサートでした。
 プログラムは、
~「こきりこの里」「篝火」「五段砧」「花二題」「証城寺のスケルツォ」「華舞歳々」~
どの曲も、鈴川先生が大好きといって選ばれた深い思い入れが、曲間をつなぐトークからも、何よりも、演奏から伝わってまいりました。
 演奏の始まる前は、舞台と客席がフラットで演奏者の手元が見えないのがちょっと残念、と思っていましたが、始まって聴いているうちに、ただただ演奏に惹き込まれて、プロ集団が織り成す美しい音に酔いしれていました。


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 落語家九代目林家正蔵氏はジャズ評論家としても知られていますが 以前こんなことを話されていました。
『ジャズプレーヤーで落語好きという方は大勢います。落語家でもジャズ好きって多いんですよ。ともに幅広いスタイルがあるんですが、その人ならではの味がある。共通点はそこに尽きるのかなと思うんですね。』
『落語でいえば、例えば古典の名作「芝浜」です。ただ「芝浜」が好きというのではなく、「だれの芝浜がいい」、「やっぱ芝浜はこの人だよね」、ということになるんです。そのプレーヤーにしか弾けない音、その噺家じゃないと語れない噺、それを聴きたいんだと思います。』
『聴いていると、音がこう、だんだんと聞こえなくなって、プレーしているさまを、ただ、じーっと見ている。それが幸せなんです。先輩方の噺だと、どうしても技巧的な部分も気になるのですが、やっぱり惹き込まれていくと、その人が高座にいるだけでいいと思える。それが音に酔いしれ、語りに酔いしれるということなんでしょう。』。
 まさにそれを実感させていただいたコンサートでした。
 そして受付から舞台転換まですべてを、合奏団OGのメンバーが手際よく担っていたのがとても印象的でした。

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~尺八倶楽部便り~
 関東研修合宿に参加して   酒井瓢将
 
 うたまくら読者のみなさま、はじめまして。
 関東正絃社尺八倶楽部の酒井瓢将と申します。主に関東圏で開催される正絃社の研修会、研修合宿の尺八要員として参加させていただいております。
 というわけで今年も、初夏の風さわやかな6月2日(土)・3日(日)の両日、静岡県は中伊豆のホテルワイナリーヒルにて開催された、正絃社関東支部の合宿研修に参加させていただきました。
 今回も合宿前日の金曜日から現地入りされる皆さんとの観光を楽しむべく、半年前には年休の申請をとっくに済ませ、指折り数えて心待ちにしていたのですが、残念ながら朝からの同行はかなわず、夕食からの参加となってしまいました。聞けばお昼は修善寺・竹林を散策して足湯を楽しみ、ワイナリーヒルズでは出来たてワインに舌鼓を打ったとのこと。私も遅ればせながら夕食後に修善寺温泉・赤蛙公園でのホタル散策、明けて土曜日午前には浄蓮の滝、トイレの神様で有名な明徳寺、そして展望台のような開放感あふれる景色を楽しめる蕎麦屋「やまびこ」での昼食に、充分に英気を養い、午後からの研修に臨みました。

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・浄蓮の滝

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・蕎麦処「やまびこ」 


 研修は例年どおり、祐子先生、哲子先生、倫子先生が3部屋に分かれて、それぞれの研修曲をご指導いただくスタイル。2日間の4コマで「弥生の曲」「楓の花」「夏草の賦」「篝火」「ふるさとの風」「編曲長唄越後獅子」、水野利彦先生の「夏霖」の7曲と盛りだくさんで、どの研修に参加するか非常に悩ましいカリキュラムとなっていました。
 尺八倶楽部会員としても目移りすることが多く、これまでの合宿では、各自で参加曲を決めて研修室にお伺いし、研修の途中で随時入れ替わりながら合奏に参加をしていましたが、今回はひとつのコマ(およそ30分)の前半で尺八倶楽部会員全員が別室に集まり、野村峰山師ご指導の下で研修曲を一通り合奏した後、各研修室にお伺いする方式をとりました。これですと、尺八倶楽部会員同士でお伺いする研修室の相談・調整ができますし、事前に演奏の注意点を確認しているので、合奏でご迷惑をおかけすることも少なくなったのではないかと思います。

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・尺八倶楽部も大奮闘

 ただ一方で、研修会の醍醐味(?)である、研修室に集まったメンバーで合奏する曲が、演奏の回数を重ねるごとに輝きを増していく、その過程を半分しか、垣間見れなかったのは残念でもありました。
 初めて研修会に参加させていただいた時からこの感動は変わらないのですが、家元、家元補佐のご指導により爪の立て方、リズムの取り方、気持ちの入れ方を少し変えるだけで曲の印象がガラッと変わってしまう瞬間は、ほんとうに印象的で面白く、箏・三絃の奥深さ、魅力を感じずにはいられないのです!
……少し話がそれてしまいましたが、正絃社の会員の皆様の研修の充実のため、そしてついでに尺八倶楽部会員の技能向上のため、研修会の参加スタイルについては、いろいろと試していけたらと思っています。
 もちろん尺八倶楽部の技能向上については、峰山先生のお力なくして語ることはできません。 
今回の合宿研修でも、最新の方法論と解説図に基づいた内吹き~外吹きワークショップや、実践に裏打ちされた各曲の演奏のコツ解説など、百回の練習にも勝る貴重なお話を浴びるように拝聴することができました。誠に勝手な願望ではありますが、今後の研修会、研修合宿でもご都合の許す限りご参加いただき、ご指導を賜りたいと思っております。
 さて、土曜日の夜は恒例の懇親会。今年も懇親会の司会を拝命したのですが、ほとんど出番がありませんでしたね。関東近県以外からの参加者紹介のコーナーでは、次から次へとマイクが繋がり、最後には盆踊りの振り付けと「大正絃社音頭」が飛び出すなど、全国規模での正絃社の絆の強さをうかがい知ることができました。 

19 izuz・賑やかな宴会で全員集合

 そして最終日、あっという間の研修合宿の最後は、参加者全員による「編曲長唄越後獅子」の大合奏で締めくくられました。広いはずの研修室が狭く感じるほどぎゅうぎゅうの人たち、およそ50名による大合奏。コンサートホールにはない、独特の空気の振動と一体感、そして少しの名残り惜しさは、一年に一度ここでしか味わえません!
 このよう体験ができる幸せをかみしめつつ、合奏に参加させていただきました。そしてさらに幸運なことに、私は曲の冒頭の尺八独奏までさせていただくことができました。こんな大人数の前での独奏は初めてでしたが、幸福感の勢いに任せて気持ちよく演奏をさせていただき、大変よい経験となりました。
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・編曲長唄越後獅子の大合奏

 最後に、哲子先生はじめ正絃社関東支部の役員の皆様には大変お世話になりました。毎年の関東合宿研修2日間+α、手放しで観光、親睦、研修を楽しむことができるのも、皆様の影のご苦労とお気遣いがあってのことと思うと、感謝の念に堪えません。尺八倶楽部の一会員に過ぎない私では、力仕事くらいしかできることはありませんが、いつ何時でも手伝いにあがりますのでご用の際はお申し付けいただければと思います。

(尺八都山流・秦瓢山門下)

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~勝手な独り言~
 オヤジの独記  秦 瓢山

〈春夜、天城山中に会して天倫の楽事を叙す。
 薫風爽やかにして霞中富士山を望す。 眼前に葡萄畑延々と緑連なるは雅に一幅の画なり。 醸成せし「信太」銘は少々若くも凛とした気品あり爽やかな喉越しにて好みなり。 夕暮れ時グラス片手に富士を眺むる天の女子、何を想わんや。酒に頼りて吾も異境に行くはまた楽なり。 明日は吐して竹音を富士に届けん。〉

 朝、目覚めるとビールの空瓶あり。聞けば「昨夜の尺八指導の名残にて、記念の品なり」と。
昨夜のお持ち帰りは、かわゆくビール瓶でござった…。が、正絃社に女子尺八部が誕生?か…。朝、三名、竹試すが意外と脈ありて、指導の曽我氏、目じり下がるも時間切れ。中には○○山を継ぐとノタマイて喜ばす女子もあり、次回に賭けん。お箏の合宿に竹の研修の時間もありかな…と。
 竹の面々は、西は大阪から山本玉山君、北は青森から田中嵩山さんが鋭意遠征され、関東勢は曽我部長以下8名での研修でした。
 朝、田中さんの祭笛を聴く。錬成ならずも素朴で心情溢れし音に心打たれる。心に響く音こそ音楽であるのを得した。

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・尺八に挑戦する女子

22 fue
・田中嵩山さんの祭笛ご披露

 研修は、講師の先生から「竹は三重奏になっています」と、見逃さず厳しく指摘を受けるなど、背筋がピンとするほど緊張感に溢れておりました。弟子は、頭をかいて「練習足らざりし」と言いて反省しており、感謝であります。
 また、野村峰山師特別授業は、科学的根拠による息の入れ方講義で、貴重且つ有意義な時間でありました。なんと、竹の奥深いことか、次回も楽しみに期待しております。
 倶楽部会員の爺化は「止む無し」だが、「若者の獲得の模索を」と、曽我部長から受ける。吾も同じ思いなり。努力を約束せし。
 参加されました正絃社の皆様に、敬意を表すると共に、運営進行された役員の方々に感謝いたします。そして正峰オヤジありがとう!

(関東尺八倶楽部)

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