各地の活躍 ~うたまくら324号より - 正絃社

各地の活躍 ~うたまくら324号より

各地の活躍

正絃社  豊後の国、別府にて奏す           秦 瓢山

 <常在戦場 これは舞台とて同じなり>

 すでに幕は上がっている。舞台も客席も暗く静寂なり。
 ドーン、ドーン… … …と太鼓が鳴り響く。暗転から舞台に灯がよみがえり、一気に皆の気が高まる。一瞬の間の後、阿吽の呼吸で、太鼓と竹とのリズムとメロディが走り出す。

 いい感じだ!!
 ここは別府市公会堂ホール。
 大分国民文化祭(大茶会)にエントリィした、正絃社の精鋭達の演目は野村祐子作「華舞歳々」だ。


 この緊張感、一糸一音乱れぬ打音、継音そして3部の箏合奏群と竹が融合し、またせめぎ合い、一気に曲を盛り上げ、刻む太鼓が強く弱く心地よく流れを引っ張って行く。そして一気に終章へ。総立ちとは云わぬが鳴り止まぬ拍手、この感動、達成感、充実感は舞台を共有した者だけに与えられるご褒美であろうか。
 出演者は、
  第一箏 野村 祐子 以下7名
  第二箏 野崎 緑  以下6名
  十七絃 野村 哲子 以下3名
  尺八  曽我 哲山 以下3名
  太鼓  野村 倫子
の総勢二十名で野村幹人師は第二箏での出演でした。客席からの感想として、哲子先生の知り合いの友人からメールがきました。
 「勢いがあり、圧巻の演奏でした!!」と。お一人の言葉ではありますが、会場におられた全ての方々が感じられた感想だと思い、祐子先生以下正絃社の方と舞台に立てた事を誇りに思います。又、総括された祐子先生、数次にわたる合奏や音源、実行本部との調整等煩雑な業務をこなしていただいた哲子・倫子先生をはじめ本部の方々に感謝申しあげます。

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正絃社の「華舞歳々」 

 竹にしろ、糸にしろ一流の芸を持つ方々との合奏、演奏はCD等教材では得られぬものが必ずあり、直ぐに自分の肥やしとなります。言葉は優しくとも心は真剣勝負、つまり、常日ごろから感性を磨き常在戦場であります。昔は仕事柄よく使った言葉ですが、いまは身も心もふやけてしまい口にして良いのか憚られるところですが、これを機に今一度刻むことにします。
 来年の国民文化祭は新潟で十月十九、二十日に開催されると聞いております。今年図らずも参加できなかった方、是非に手を上げてください。我等関東三人衆も手を上げまする。そして、この際、演奏旅行を語るに、演奏だけで終わるはずがありません。楽しみのbeforeもafterもあります。
 今回は、名古屋組主力が先遣隊として先に現地に入り、関東組哲子親分以下侍女二名(アレイ、アヤ)、警固の者三名(尺八三人衆)は後発で、リハーサル当日に別府に入る等、大きくは二組に分かれ宿も違ったため、それぞれが土地の名物料理を堪能し、地獄巡り等名所旧跡の視察体感し、収穫の多い楽しい旅であったことを報告致します。
 特に関東組としてbeforeは別府駅に降りたった際、駅の広場に新海さんそっくりのラガーマンが出迎えてくれ、巨大なモニュメントに暫し口開けて感動、昼食は哲子親分自ら駅の案内所に駆け込んで10分の交渉の末、大和田寿司店に決定、なんと大当たり! ネタの厚さ約1センチもありプリプリで旨い! 寿司での身の厚さ旨さに、別府恐るべし。


0402 別府駅前のラガーマン

0403 プリプリのお寿司


 前夜祭には何の行き違いか30分遅く交流懇親会場に入り、ほとんどの食べ物は無くお酒で満たし、写真はニコニコ内心チョイイラ。終わって、祐子先生以下で別府の夜の町に、「豚骨ラーメンじゃー」となだれ込み、やっと食した豚骨ラーメンの「旨かー!」 スープも思っていたほど濃くもなく、祐子先生も大満足の様子でした。
 Afterは以前、幹部会関東支部長を務めておられた田頭さんが、熊本から駆けつけて来られ、湯布院にて一泊を共にし、温泉とお酒・料理を堪能。翌日には熊本、阿蘇をエスコートして頂いた。
 田頭さんとの再会は、今回の旅の楽しみのひとつであったので、嬉しい限りでした。とくに、阿蘇の雄大な地形と一面ススキに覆われた台地と空の青さ、たなびく雲のコントラストは絶景で、白煙を上げる火口と山肌に刻まれた地震の傷跡と相まって、印象的で目に焼き付いています。(有毒ガス有りで入山規制により火口には近づけず、風が冷たかった~)


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熊本から駆け付けた田頭さんとともに

 I shall come back to the Aso after few years ,when will be green season.
~これじゃ竹と同じレベルで怪しいな。田頭さま、次は緑の季節がいい、また皆でゆくよ~
 以上で別府国民文化祭の紀行文は終わらせますが、他には曽我さんの写真で30年目の真実とか、個人的には、阿蘇神社で求めたおみくじのお告げの件とかで濃厚なafterでした。
 今年は、『平成』から新しい年号に変わりますが、想いは継続し、日々、常在戦場を積み重ねて『進化』し、皆様と合宿や舞台等にて相まみえますことを楽しみにしております。齢70にして『進化』か~。口だけで終わらんようにせにゃいけんのう~。
 今年も、正絃社尺八倶楽部の面々共々、宜しくお付き合いお願い致します。 

 良き年『進化』に乾杯!!  (関東正絃社尺八倶楽部)

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岐阜市フィレンツェ姉妹都市提携四十周年記念音楽交流事業に参加して
                                          中 西 瑞 恵 

 昨年10月25日、「琴きらら」の栗山美智子先生、山口祐未さん、私の三名は柴橋正直岐阜市長、教育長をはじめ岐阜市役所の方々、スコラーズの皆様と共に、オーストリアの首都ウィーンに向かいました。スロバキアの首都ブラスチラバのコメニウス大学にて演奏をするためです。
 スロバキアを訪れるのは2020年東京オリンピックにおいて、岐阜市がホストタウンになっているため、その定義にもある「人的・文化的な相互交流を図ること」が目的です。(実はウィーンとブラスチラバは首都間が車で一時間少々という一番近い距離にあるそうです。)
 コメニウス大学では、日本語学科の学生たちにいろいろ準備などして頂いたのですが、細やかな言葉遣い、相手を敬う態度、お菓子やお茶の用意から説明する指先に至るまで、まさに「おもてなし」のお迎えでした。この大学はとても優秀な大学だそうですが、このような「おもてなし」は一日やそこらでは出来るものではありません。本当に日本という国について深く学んでいると思います。日本人として、とても嬉しく誇らしく感じました。
 大学での演奏は、まず私たちの「さくら三重奏」、箏の伴奏による「長良川讃歌」「かわさき」、そして「飛騨やんさ」でした。スコラーズの皆様の勢いある歌声は拍手喝采でした。 
 また、箏を見たことのない学生たちが、立ち上がって興味深く聴いてくれていた姿にも感動しました。
 10月27日には、フィレンツェに移動し長良児童合唱団と合流しました。この日、イタリアは暴風雨の影響で、飛行機が飛ばない等のアクシデントもありました。その様な天候のなかでも、サンタマリアデルフォーレ大聖堂等、教科書で見た通りの世界は、本当に絵画の中にいるようでした。

0501ウフィッツイ美術館屋上テラスにて

 フィレンツェではウフィツィ美術館、アカデミア美術館の見学、また市庁舎を訪れフィレンツェ副市長との交流、ヴェッキオ宮殿の見学等を経てペルゴラ劇場での演奏です。
 演奏前の練習がほとんど出来ず困っていたところ、ホテルの方の御配慮から広間を借りることができました。ホテルのスタッフの方々は練習も見てくださり、「本番も、是非、見たい」とも言われました。海外でのこの様な優しさは本当に嬉しいものです。
 さて、本番の会場となるペルゴラ劇場は、1661年に完成したイタリアで最も古い劇場です。いろいろなコンサートやオペラが頻繁に開かれており、ここでの演奏は非常に名誉あるものです。このような機会を頂けたことに本当に感謝いたします。ここでは、私たち三人の「さくら三重奏」、そしてスコラーズ・長良合唱団の方達による創作オペラ『狐の嫁入り』『豆の木地蔵』が披露されました。

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ペルゴラ劇場スコラーズの山口先生とともに

 私は二年前に三絃のお稽古を始め、合奏してくださる栗山先生の箏の音色に興味を持ち、少し遅れて箏のお稽古も始めました。演奏会では三絃で出ることが多く、箏の練習はあまりしておりませんでした。それでも今回、多い時には一日8時間の練習をし、この交流会に参加しました。本当に辛く苦しい時もありましたが、今となってはこの経験のおかげで、今まで以上にこの世界が好きになりました。
 また、着物で歩いていると、街行く外人の方から何度も写真を撮影されました。着物、和楽、おもてなし、その文化が私にはとても誇らしく、日本人に生まれて良かったと、心から思うことができました。
 また、演奏した曲はまさに日本の花、〈さくらが舞う〉〈散る〉変化のある素晴らしい曲です。この交流に相応しい曲とめぐり会えたことにも感謝です。もうすぐ「赤いちゃんちゃんこ」を着る私ですが、今回の演奏旅行は、まだまだ頑張って上手になりたいと思える、昔の部活を思い出すような素敵な経験でした。

(岐阜市・栗山美智子門下)

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平成三十年の正絃社合奏団活動報告   水野 優子

 正絃社合奏団では、昨年も多くの活動の場に恵まれ、非常に充実した1年でした。私たち合奏団にすばらしい勉強の機会を与えてくださり、いつも熱心にご指導くだる祐子先生に、まずはこの場をお借りして、心よりお礼申しあげます。  
 また、温かく見守ってくださるそれぞれのお師匠、応援してくださる諸先生・先輩方にも、感謝の念が堪えません。
 さて、一昨年の春から始まった宗次ホール・スイーツタイムコンサートは、正峰先生の生誕90周年記念として、2年かけて春と秋に2回ずつ開催する、計4回シリーズの公演となりました。正峰先生のすばらしい作曲を、宗次ホールという優れた音楽専用ホールでお客さまにお届けする、その大変な重責を背負った日々の練習は、合奏団一同に急速に成長する2年間を与えてくれました。

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宗次ホールスイーツタイムコンサート

 また、昨年4月の「春のミニコンサート」(刈谷市総合文化センター・アイリス小ホール)では、合奏団メンバーをメインとして裏方を任せていただきました。幕のない会場で、舞台の配置や動線を一から考えて動くというのは予想以上に難しく、タイムスケジュールにも追われ、ご出演の皆さまにはご迷惑をおかけしたことと思います。スムーズに進行する普段の演奏会が、祐子先生や倫子先生をはじめとする、諸先生方の綿密な計算によるものと実感し、自分たちの勉強不足さを痛感するところとなりました。
 6月には昭和文化小劇場にて、長唄の杵屋勝千華先生主催による「桃華の会」に出演し、日本舞踊の稲垣舞比先生とご門下の皆さまともご一緒に、「編曲長唄越後獅子」を演奏しました。「桃華の会」に来場されたお客さまのご縁により、10月には中部国際空港セントレアビル4階イベントプラザにての「第三回日中友好・錦秋の集い」に出演させていただきました。

 

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セントレアイベントプラザ出演    


 毎年、共演させていただく民謡の「尾八会」では、昨年の開催は8月の暑さの最中でしたが、蟹江尾八先生率いるご社中の皆さまとの合奏も楽しい舞台でした。
一年を振り返りますと、民謡・長唄・地歌・舞踊などとの合奏や共演は、間合いの取り方にも違いがあり、お互いの音を聴きあうという、合奏の基本を強く意識する貴重な経験でした。
 今年はいよいよ4月に、正絃社のメインイベント「春の公演」。そして、8月には再び、宗次ホールにて新シリーズのコンサートが始まります。
 合奏団一同、より一層、精進してまいりたいと存じますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申しあげます。
(正絃社合奏団・准師範)

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故・竹内伸江先生の思いをのせて
箏コンサート「そよ風のように」        杉本 弥生

 竹内伸江先生主催の私たち「そよ風の会」では、四年前の公民館コンサートの後は、「次は先生の還暦コンサートをやろうね!」と話していました。
 しかし、その約束を守れないうちに三年前の十月、病が伸江先生を私たちの前から連れて行ってしまいました。あまりに早すぎる別れ、あまりに大きな悲しみは、私たちには重すぎる現実でした。何もできないまま、二年が過ぎてしまいました。
 そんな時、岩瀬直子先生が、「伸江さんの三回忌、何かやりましょう!」と、声を上げてくださいました。
 そして、荒木美子先生、石原未祐己先生、水谷佳代先生、荒堀ひかる先生からも、「伸江さんのお箏がそのままになっているのは淋しい、もう一度奏でてあげたい。」
という声。その思いで、このコンサートは立ち上がりました。

日 時 平成30年11月24日(土)
会 場 蒲郡市・三谷公民館
出 演 岩瀬直子 荒木美子 石原未祐己
水谷佳代 荒堀ひかる
スタッフ「その風の会」メンバーから
(演奏)中山香奈子 向井奈都実
     三井貴和子 小田恵子 杉本弥生
(会場)白木陽子 佐藤来花 伊藤る美 
    小田寿代 竹内公子 向井嘉都子

 会場には伸江先生のお箏を置きました。その横には家元祐子先生から届けられたお花。
伸江先生の、「今も祐子先生に会うたびにときめくの!」の声が聞こえるようでした。
 ステージでは伸江先生の十七絃を先生方が奏でてくださり、曲間は先生との思い出を話してくださいました。あらためて伸江先生と正絃社との深い絆、お箏を愛する思いを感じました。

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竹内伸江先生愛用の箏とともに


 あれから二年、三人だった伸江先生のお孫さんも今は五人とお腹に一人。みんな揃って会場に来てくれました。八か月だった初孫の琴伸(ことの)ちゃんはもうすぐ三才。お箏を見つめ、演奏者をまねて指が動いていました。きっと伸江おばあちゃまを肌で感じていた瞬間です。
 私たちも、伸江先生と一緒にお箏が弾けた幸せをかみしめながら、一音一音、大切に箏の音を聴き、また、演奏できました。
伸江先生のお稽古休止から三年ぶりに箏に触れたメンバーもいました。彼女は思い切ってコンサートに出ようと自主練習をし、「やっぱりお箏弾きたいな!」という思いが再びわいてきたそうです。
今回のコンサートを立ち上げた本当の力は、伸江先生からの、「みんな、もっと、もっとお稽古して来てね。私は先に行って待ってるからね!」というメッセージだったかもしれません。

(助教・蒲郡市)

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お便りより


・向日葵会(小島君代社中)では、昨年10月14日、本巣市最乗寺にての親鸞聖人750年記念法要にて会員有志が「千代の華」「月に寄せる日本のうた」を演奏。11月4日、岐阜市七郷校下文化祭では、岐阜少年少女琴クラブと会員有志で「華舞歳々」などを演奏し、「楽しい曲ですね。」と好評でした。

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最乗寺での記念法要

 

・四日市・伴野節子社中は、昨年10月8日、四日市市民芸術文化祭に出演、お揃いのブラウスで見た目にもきれいな舞台となりました。

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四日市市民芸術祭:伴野社中

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