各地の活躍 ~うたまくら334号より - 正絃社

各地の活躍 ~うたまくら334号より

各地の活躍

『光源氏が回る、美神降臨』 林 明里

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百本の帯を背景に舞う源氏と姫君たち

 紫式部が語りはじめる。煌めく金の帯の幕と大きな生け花の舞台の前、光源氏がシルエットでくるくる回る。まるで蝶のように女性たちの間を舞い踊り、薫物のような香りがふわりとどこからか漂った。そして箏、笛、ピアノの心地よい音色が私たちを幻想的な世界へいざなってくれる……。
 5月2日、名古屋市北文化小劇場で開催された~源氏絵巻を舞う~『美神降臨』の舞台の観客席に私は居ました。
 祐子先生が所属する愛知芸術文化協会(ANET)のメンバーによるコラボレーションにより「源氏物語」を題材に、和洋の垣根を飛び越え、音楽家や和洋の舞踊家、花道家、語り、演出、作家の方々が集結された舞台です。企画されたのは、正絃社「春の公演」にても度々、地歌舞をご披露された山村楽乃先生と、朗読にも歌にもご活躍の白樺八靑さんによるユニット「八楽座」。エンディング曲を含めた何曲かを祐子先生が作曲され、倫子先生が演奏者として舞台に立たれました。

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下手側に箏・ピアノ・笛の演奏者

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帯のデコレーション

 源氏物語に登場する女性たちから、六条御息所・末摘花(地歌舞・山村楽乃さん)、朧月夜・若紫(日本舞踊・西川扇久美城さん)、夕顔・藤壺(洋舞・こかチちかこさん)、玉鬘・桐壺(洋舞・苅谷 夏さん)と色男の光源氏(洋舞・大寺資二さん)との物語を、紫式部(白樺八靑さん)が語り、箏、ピアノ(朝木奏多さん)、笛(四恩 緋さん)による音楽が舞台を彩るひとときでした。
 光源氏と女性達との逢瀬を語り、それを和洋の舞や音で表現する、古典でありつつ現代的に表現された幻想的な世界に浸る時間はとても楽しく、あっという間に一時間が過ぎました。コロナ禍のために公演時間を短縮されたそうで、もっと見たい、もっと聴きたいと思うものの、凝縮された源氏絵巻が展開されました。
 箏・ピアノ・笛の楽器演奏者の前には帳があって姿が見えなかったのですが、その演出は、実は光源氏達が踊る舞台は帳の内側で、外側が演奏者達、自分たち観客はこっそり帳の内にいて、高貴な人たちの逢瀬を覗いているのでは?とも思わされました。

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幻想的な舞台

 涙を誘われる儚い夕顔の踊りの一方で、赤いお鼻の不美人・末摘花の登場に笑いあり、シリアスとコミカルさを併せもつ舞台構成に、観客の心はがっちりと掴まれました。箏の演奏が主な倫子先生ですが、コミカルな末摘花のシーンでは、三絃を肩からかけて登場して歌もあり面白い場面でした。最後の場面では、エンディングテーマ曲に合わせて歌声が響き、音が鳴り、演者たちが花のオブジェの周りを舞い踊って物語の終焉へ。
 洋舞あり、日本舞踊あり、季節に合わせて飾られた藤の花のオブジェ、背景に使われた百本ほどの帯コレクション、客席入口にはお香が焚かれて薫りを楽しみ、ピアノソロ、笛、箏、歌を聴き・・・、視覚、嗅覚、聴覚に、とても楽しい舞台でした。

 そして、その幻想的な夢に酔ったまま会場を後にした私は、つい自身の方向感覚の無さを忘れ、駅までの帰り道で壮大な迷子になったことはここだけの話です(笑)
 後で、この舞台を上演するにあたり、コロナでの延期や、出演者の変更等、様々な苦難があったことを知りました。艱難辛苦を乗り越えて、私たちに舞台を鑑賞する楽しみを思い出させてくれて、素敵な夢のひとときを見せていただいた祐子先生や倫子先生、各関係者の方々に心より感謝したいと思います。
(名古屋市・野崎緑門下・准師範)

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箏・三絃・尺八
正絃社 春の宴コンサート ~箏と戯れて~

 5月15日(土)16日(日)、刈谷市総合文化センター・アイリス小ホールにて、コロナ感染対策のもと、無事、終了。出演の皆さまからのお便りを掲載いたします。

春の宴コンサート 第2回を終えて  河 北 裕 子

 このたびの第2回「春の宴コンサート~箏と戯れて」に出演させていただきました。
会場所在地の刈谷市は、全国的な知名度は高くありませんが、あの徳川家康の生母於大の方の実家水野家が有りました。今ではトヨタの関連会社が本社を構える愛知県下54市町村の中で第3位の裕福な市です。この  アイリス小ホールは、客席数二八二席と小じんまりとしていますが、音響が良く演奏にはマイクを使用しないところが気に入っています。

 初回、2018年4月の「春の宴コンサート」では、観客が溢れて客席に入れず、ロビーのモニターでご視聴頂くと言う大盛況でした。
 第2回である今回の開催は、当初は二〇二〇年、つまり昨年の予定でしたが、ご存じの通りコロナウィルス感染拡大のため延期、このたびの開催の準備にあたり先生方はさぞかしご苦労されたことと思います。
 さてゲストには、若手で輝かしい経歴の尺八奏者3名、友常、吉越、中島各先生と、箏には、男組のメンバーで作曲も手がける旬の若手、小田、本間先生お二方をお迎えし、平均年齢の若返りにも貢献していただきました。

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皆さんとともに前列中央・河北さん

 ところで、この演奏会ではなんと出演の舞台を自らプロデュース・・・先生が曲を決められるのではなく、自分たちでメンバーを集めて演奏曲を決め、衣装も考えてエントリー・・・先生方はその全面的フォローとバックアップ。ちょっと面白いですよね・・・。
 私は「木蓮の会」(木曜日にお稽古するメンバーの会)の一員で、今回の出演には水野利彦先生作曲の「夢幻歌」にエントリー。そして衣装は、ずーっと憧れていましたドレス(中世の貴婦人)とティアラの髪飾り。
 ご存じかと思いますが、この曲の演奏は9パートが必要。1パート一人ずつで9名、ですから9名でも全員ソロみたいなもの。そこで私に廻ってきたのがなんと独奏‼ 高いハードル‼ カッコいい曲、しかも、コンサート2日目、最後の曲(大トリ)に抜擢されました・・・が、当初二〇二〇年四月開催の予定が一年延期となり、あれよあれよとメンバーが脱落して足らなくなり・・・。
 そんな時、なんとかしてくださるのが我らが先生・・・ゲストの小田、本間両先生や尺八の幹人先生まで巻き込み、豪華キャストでチーム再編成。先生のお心遣いに感謝です。

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「夢幻歌」ゲストに挟まれて前列中央・河北裕子さん

 その反面、私は超ド級のプレッシャーを感ぜずにはいられませんでした。今まで、及ばずながらもいろいろな演奏会を経験してきましたが、いちばん練習し、私の心に残る曲となったことは間違いありません。
 全体のプログラムを見ると、他のチームも曲に合わせて衣装の工夫など舞台を華やかに盛り上げています。「砂丘の詩」では皆さんがベリーダンス風の衣装で尺八の先生はアラビアン商人風。

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野崎緑社中のベリーダンス風「砂丘の詩」

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「紅の魔法陣」はお揃いの赤ラメブラウス

 また前回に大人気をさらった「回転木馬」では二日間のプログラムで演奏者はそれぞれコスプレに熱を入れ・・・茶摘み娘、ロデオのカウボーイ、ドラえもん、アルプスの少女、お化け・・・(ごめんなさい、もう笑いが止まりません)

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様々なコスプレ衣装の「回転木馬」(2枚)

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馬のアレンジ曲

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鼠のアレンジ曲  

 この小ホールの舞台には幕がありませんので、正絃社合奏団を中心としたメンバーが舞台スタッフに活躍、配置図とにらめっこしていました。曲間には短いコミカルな、そして私たちがよく耳にする曲などがアレンジされ宴の余興のごとく演奏・・・、体操の時間などもあり、様々な演出が工夫されていて楽しい一日となりました。

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舞台スタッフチーム集合

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配置図確認中

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大忙しの調絃チーム

 後片付けも皆さんの協力で手早く、楽器屋さんの車に積み込み完了。こうして第2回「春の宴コンサート」は無事、終了、私は皆さんからからアドバイスや励ましのお言葉をたくさん頂き、充実感と満足感に包まれて終わることができました。本当に有難うございました。
 また、さっそく来年の開催も決まったとか、どんな宴になるのか今から楽しみです。

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皆で協力して楽器の積込み

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息子の初舞台~息子と初共演 大野 梨早

 5月15日16日、刈谷市総合文化センター・小ホールで開催されたコンサート「箏と戯れて」に息子と一緒に出演させていただきました。
 息子の初舞台。水野利彦先生作曲の「ふるさと・21」に息子は第1箏、私は第2箏で出演させていただきました。
 一年半前、息子が「ママと一緒にお箏を習いたい」と言ってくれて、一緒にお教室に通うようになった時から、いつか一緒にコンサートに出ることが夢であり目標でした。
 息子の初舞台は、自分のこと以上に楽しみで仕方ありませんでした。コンサートの出演が決まってからは、練習を重ねて暗譜も完璧。一か月前になると、入場から着席、お辞儀をして構えて「サンハイッ」の合図で弾き始めるという流れも確認し、二日前には本番の衣装を着て練習もしました。
 もう心配することは何もなく、満を持して迎えた本番……、演奏の前に祐子先生のアナウンスと自己紹介の場面で名前を聞かれた息子は固まってしまい、名前は言えず首を横に振っていました。息子の名前は代わりに私が言いました。(後で息子に聞いたら、「恥ずかしくて言えなかった……。」と言っていました)
 でも、弾き始めたら演奏はバッチリ!(親バカですが)今までで一番上手に弾けたと思います。

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演奏バッチリ、大野聖倫くん

 客席の最前列に座っていた、おじいちゃん、おばあちゃんからも
「上手だったね!カッコ良かったよ!」
と沢山ほめてもらい、孫の初舞台をとても喜んでいました。
 コンサートはいいですね。コンサートは楽しいです。このような大変な時期にコンサートを開催して下さり、祐子先生、倫子先生はじめゲストの先生方、正絃社の先生方、皆様、本当にありがとうございました。

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左端・大野梨早さんと右側・聖倫くん

 息子はコンサートで沢山の方にお会いし、沢山の演奏を聴いて、よりお箏が好きになりました。そして、次に向けての新たな目標もできました。大好きなお箏を親子で共有出来て私はとても嬉しいです。これからも楽しみながら親子で一緒に頑張りたいです。倫子先生、これからも私たち親子をよろしくお願いいたします。
(北名古屋市・直門・准師範)

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充実した春の宴コンサート  杉浦 和子

 昨年、開催される予定のコンサートは、新型コロナ感染症が大流行し緊急事態宣言が発せられ延期となり、密を避けるため今回は二日間に分けての開催となりました。
 そもそも、刈谷での開催となったのは四年前の春、祐子先生に『建物が新しく設備も良く、アクセスも(JR刈谷駅、名鉄刈谷駅の連絡通路から徒歩3分)非常に近く、よい施設があります』とお話しさせて頂き会場を予約。初回のコンサートは翌平成30年4月に開催となりました。

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右側・杉浦和子さん

 さて今回、当日15(土)朝8時45分頃搬入口前まで、家族に送ってもらい会場のシャッター扉が開くのを待ち、直ぐに控室となる4階の研修室を開錠。白板には出演者への激励と、控室での三密を避ける行動のお願いを書き、それから舞台裏に戻ってリハーサルの準備をしました。

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搬入口に集合の皆さん

 時間はアッと言う間に過ぎ、いよいよ本番。社中での出演曲『もみじば』を暗譜演奏。
最初のページはゆっくり弾き始めますので、合奏するのに苦労しました。後半のページの引き連の奏法は、(作曲者の意向で独自の弾き方を心掛け)全員で意気を合わせて合奏出来ました。感染防止対策のため、マウスシールド装着での演奏で、歌の部分がハッキリお客様にお届けできたかどうか・・・。

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中央・杉浦和子さんと社中の皆さん

 次には『うさぎ・五木の子守唄』を入門間もない、お稽古歴半年程の小学生の子どもの「演奏デビュー」(後述)の伴奏に出演。
 そして『深山の春』の暗譜演奏。第一箏の独奏部分を弾かせて頂きました。
 この曲は、本番約三週間前に行った同会場でのリハーサルで初めて揃っての合奏(四教室合同のメンバー)でしたので、最初は速度もバラバラで合奏に苦労しました。皆さん、不安に思っていたと思います。舞台での練習のあと、何度も楽屋で合奏して、次第に揃うようになり、本番にはよい合奏ができ、ほっとしました。
 高音箏の軽妙洒脱なタッチ、力強い春の足音を響かせる低音箏のリズム、さまざまな技巧音を駆使しながら伝統的な奏法が生かされ、尺八も加わって三パートが一体となって合奏する、野村正峰先生作曲のとても素敵な曲です。
 そして古典の大曲『尾上の松』、三絃で暗譜演奏。九州系地歌の歌もの三絃曲に宮城道雄氏が箏の手付けをされた難曲で、祝儀の曲として演奏される曲です。曲中に三回の転調があり、三絃の糸巻がカラカラと緩みはしないか心配でしたが、無事に演奏でき安堵しました。

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歌もの「尾上の松」はマウスガード装着

 今までの演奏会では一曲だけの暗譜演奏はしましたが、今回は三曲もの暗譜演奏に挑戦(老体にムチ打ち今回限り?)が出来、満足感で頬が緩みました。
 二日目も前日と同様の会場到着時間。搬入口が開くまで、先に到着された生田屋楽器店さんと暫くおしゃべりして扉が開くのを待ち、開錠すると舞台の袖を通って4階の控室二部屋の開錠に。昨日同様、白板に書いていたらお一人、入ってきました。舞台裏に戻ろうとしてホール入口に着くと、尺八の友常毘山様が到着されたので、この入口扉を中から開けて入っていただき、遠回りしていただかなくてすみました。

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尺八・友常毘山さん

 お昼頃には、控室の見回りに・・・、片方の部屋にはお二人、もう一方の部屋には守山教室の方々が数人だけで、部屋の中は密にはなっていませんでした。
 演奏会終了後、控室を施錠して受付に鍵を返却し任務完了。会場内は空調も良く効き、二日間快適に過ごすことができ、演奏もスムーズに進行し、無事二日間のコンサートを閉幕。
 楽しいひと時をありがとうございました
(安城教室主宰・直門・大師範)

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初めての演奏会  松 下 華 菜
          
 私は、今回初めてお琴の演奏会に出させていただき「うさぎ」と「五木の子守唄」を弾きました。まだお琴を習い始めて半年程です。4月25日の最初のリハーサルの時は、演奏会場も初めてでしたし、ドキドキで上手く弾けなかったです。本番当日は午前中にリハーサルがあり、本番は落ち着いて弾けました。
 次回の演奏会には、もっとしっかり練習してお琴を弾きたいと思いました。(杉浦和子門下)

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前列右・松下華菜さん

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長唄「桃華の会」日本の芸能 ~解説付きコンサート

 5月22日、昭和文化小劇場にて開催された表題のコンサートには、野村祐子と正絃社合奏団が出演。歌劇団ロジェとともに「愛と祈りの調べ」、箏曲のみの演奏で「ふるさとの風」、長唄、鳴物、稲垣流日本舞踊、歌劇団ロジェとの「長唄花見踊」コラボレーションでコンサートを華やかにしめくくりました。

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歌劇団ロジェとともに「愛と祈りの調べ」

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「元禄花見踊」コラボレーション

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全員のフィナーレ

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