野村峰山師 重要無形文化財保持者認定記念祝賀会  ~うたまくら340号より - 正絃社

野村峰山師 重要無形文化財保持者認定記念祝賀会 ~うたまくら340号より

野村峰山師
重要無形文化財保持者 認定記念祝賀会

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 秋も深まり師走を目の前にした11月30日、名古屋マリオットアソシアホテル・タワーズボールルームにて、公益財団法人都山流尺八楽会主催による祝賀会が行われました。


 ご出席の方々の一部を列記しますと、四代中尾都山ご宗家、森田柊山理事長、五代継承者・中尾都康様はもとより全国から百名を超える都山流尺八楽会お歴々の会員、ご来賓には、

 愛知県知事・大村秀章様、名古屋市長・河村たかし様、名古屋市文化振興事業団理事長・杉山勝様、日本伝統文化振興財団理事長・市橋雄二様、同顧問・藤本草様、滋賀県立文化産業交流会館館長・竹村憲男様、CBCテレビ取締役副会長・林尚樹様、カレーハウスCOCO壱番屋創業者・宗次徳二様、お茶の水女子大学名誉教授・徳丸吉彦様、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター名誉教授・久保田敏子様、日本音楽研究家・加納マリ様、日本伝統音楽振興会代表・黒河内茂様、NHK制作局芸能チーフ・プロデューサー・佐々木治彦様、国立劇場制作部伝統芸能部・石橋幹己様、邦楽研究家・谷垣内和子様、静岡大学教授・長谷川慎様、くらしき作陽大学講師・釣谷真弓様、岩清水八幡宮禰宜・佐波近尚様、正派邦楽会三代目家元・中島一子様、琴友会会長・菊原光治様、研箏会会長・米川敏子様、箏道音楽院代表・砂崎知子様、山田流春和会代表・山川園松様、同・山川芳子様、富士美会代表・富樫妙子様、九州系地歌演奏家・藤本昭子様、沢井箏曲院会長・沢井比可流様、箏道音楽院副代表・高畠一郎様、当道音楽会副理事長・菊重精峰様、菊水流尺八道二代宗家・菊水湖風様、日本尺八連盟・鯉江丈山様・琴古流尺八家・菅原久仁義様、琴古流尺八家・善養寺恵介様、琴古流尺八家・徳丸十盟様、南山大学名誉教授・安田文吉様、名古屋市立大学教授・水野みか子様、愛知芸術文化協会副理事長・加藤智様、同・白濱洋介様、CBCテレビ解説委員・北島徹也様、地元愛知の芸術文化関係者の皆さま、楽器店の皆様、

 そして正絃社会員の皆様、ご縁のある皆さま方多数三百有余名の出席です。
 舞台の両サイドには多方面からのスタンド花が所狭しとばかりに並べられていました。

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満場の出席者


・オープニング
 さて、祝賀会オープニングでは、石井流太鼓方河村眞之介様の太鼓の音が鳴り響き、宴会場にはピーンと張りつめた空気が漂い、しばらくすると後方二か所の扉から登場した野村峰山師と藤原道山師が「鶴の巣籠」を客席の間を縫って演奏しながら舞台へ進みました。舞台へ上がったご両人の二重奏はさすが圧巻で、参列者の耳を魅了し、目は舞台へ釘付け。この1曲を聴いただけで「今日、ここに来たかいがあった。」と皆さん満足の顔。

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客席の間を縫って演奏する野村峰山師

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藤原道山・野村峰山二重奏


 CBCテレビの人気アナウンサー斉藤初音さんの和やかな司会進行で祝賀会が始まりました。
 まず最初に主催者である都山流四代中尾都山ご宗家のご挨拶、続いて文化庁文化財主任調査官吉田純子様から重要無形文化財保持者についてのメッセージが司会者から紹介され、ご来賓の愛知県知事大村秀章様(遅れての出席のため鏡開きのあとで)、名古屋市長河村たかし様、CBCテレビ取締役副会長・林尚樹様、お茶の水女子大学名誉教授・徳丸吉彦様、日本音楽研究家・加納マリ様の祝辞、東京藝術大学学長日比野克彦様からのメッセージが紹介されました。

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四代中尾都山宗家ご挨拶

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愛知県知事大村秀章様

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名古屋市長河村たかし様

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CBC副会長林尚樹様

 

・徳丸吉彦様お祝辞

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 まず、野村峰山さんが人間国宝に指定されたことに、お祝いを申し上げます。
これは、個人にとっての栄誉でありますが、野村さんを人間国宝に指定することにより、都山流尺八音楽が日本の伝統音楽の一つとして尊重されたことを喜んでおります。また、野村さんの大きな企画である6回の演奏会「初代中尾都山~都山流尺八楽の軌跡」が無事に完了し、その録音がⅭDになったことを私は喜んでおります。
 思い返しますと、この演奏会の計画が始まったのは、今から約5年前のことでした。野村さんは、この演奏会の実行を助けることになる友常毘山さんを連れて、二〇一七年11月16日に我が家にお出でになり、その壮大な計画をどうしたら実現できるかを相談されました。中尾都山作品を作曲年代順に演奏するのではなく、月や水などの自然を題材としたもので曲目を纏めたいと言われました。
 皆さまは、野村さんがなぜ私に相談に来られたのかを不思議に思われるでしょう。野村さんと私は、三曲の演奏会を通じて、長い付き合いがあったのです。
 1990年頃、私は、国際交流基金や外務省から、日本音楽を外国に紹介することを依頼されました。私は「日本の室内楽」としての三曲を中心に紹介しようと考え、優れた演奏家たちにグループを作ってもらい、一緒に外国に行っていただくことを考えました。それが、三曲のグループ「新しい風」です。当初のメンバーは、石垣征山さん・川村泰山さん・菊原光治さん・富山清隆さん・米川裕枝さんでした。(五十音順)この「新しい風」は、ヨーロッパの10に及ぶ都市で、素晴らしい聴衆に巡り会い演奏技術を磨きました。一九九七年には「三曲新しい風」というCDを出し、文化庁芸術作品賞を受賞しました。
 野村さんには、亡くなられた石垣さんの後任として参加して頂き、もっとも若いメンバーとして、宮崎県立劇場、紀尾井小ホールなどで、演奏とともに新作の発表でも活躍して頂きました。
 このグループは、毎年、夏に八ヶ岳の麓にある私の小さな山の家で合宿をします。2020年からは新型コロナのため合宿を自粛しております。メンバーはそれぞれ名人として知られていますが、一年ぶりに集まり初日の午後、練習を始めると、音程の好みでも、音量のバランスでも、ぎくしゃくとした点が目立ちます。そこで初日の夕食は、私がひとりで作る習慣ができました。皆さんが手伝いましょうと言ってくれるのですが、手事の初段だけでも音を合わせておいて欲しいと言って、断ります。
 そして、夕食に集まりシャンパンで乾杯してから、私の作る簡単な西洋料理、ロースト・ビーフや野菜のグラタンなどでワインを飲むと、お互いに打ち解けて意志の疎通がうまく行くようになります。
 翌日からは全員で料理を作ります。和食のシェフは菊原さんで、「裕枝さん、ホヤをさばいてな。」あるいは私に「アワビ(の殻を)を12個外してな」などと命令がきます。バーベキューの火を起こすのは富山さんと野村さんですが、炭の状態を決めるのはシェフの菊原さんです。みんなが早く焼きたいと言っても、なかなか許可してくれません。
 こうした共同作業が進むにつれて、他の人に対しても意見が出やすくなります。尺八の川村さんと野村さんが合奏していると、他の三人が、「ハハロのハの音が少し上がってきた」とか、三曲合奏では、「短い合いの手の尺八の音量が大きすぎる」という具合に注意が飛び交うようになります。
 私はこうした優れた仲間との経験が、野村さんにとって有意義であったと思います。
 この度の6回の演奏会で、野村さんは、自分のお弟子さんだけでなく、実に多くの演奏家に機会を与えました。この姿勢は、これからの邦楽にとって極めて需要です。人間国宝になっても、この姿勢を保ちつづけて活動してください。ご清聴ありがとうございました。

 

・加納マリ様お祝辞

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 ただいま、ご紹介にあずかりました加納マリと申します。
 この度は、野村峰山さんの重要無形文化財保持者認定(各個認定)(いわゆる人間国宝)のご認定、誠におめでとうございます。
 野村峰山さんと私が初めてお会いしたのは、今から8年近く前の2015年2月(平成26年度)の文化庁芸術祭の贈賞式だったと思います。この時、野村峰山さんは芸術祭のレコード部門で「野村峰山尺八独奏会」~流祖中尾都山作品より~というCDアルバムにより優秀賞を収められました。
 2019年度(令和1年度)に芸術選奨を受賞なさった折にも、都山流尺八の祖、中尾都山の作品、全曲演奏に挑まれ、その成果が評価されました。ここで芸術選奨文部科学大臣賞(音楽部門)を受賞なさったときの贈賞理由をご紹介したいと存じます。
「野村峰山氏は今や尺八界のベテランとして多くの演奏会でその実力を示している。特に令和元年は、都山流の流祖である初代中尾都山の尺八作品を集めた演奏会を4回行い、尺八に対する氏の姿勢をさらに明らかにした。都山の作品を各回にバランスよく配置。独奏曲以外は様々な共演者と合奏し、毎回、五線譜や尺八譜を用いた詳細な作品分析を自ら行うなど、確かな理論にうらづけされた演奏は高く評価される。」
というものでした。
 この時のプログラムノートは、のちに一冊の本としてまとめられ、立派な著書『初代中尾都山の軌跡~音楽的思想~』となりました。流祖中尾都山の作品が詳しく分析され、五線譜と尺八譜が並行して掲載されるなど、画期的な本として、尺八界に大きな足跡を残されています。(国会図書館に収められています。)
 今回の人間国宝認定につきましても、これまでの峰山さんのさまざまな業績が広く認められたものと心からお喜びする次第でございます。
 峰山さんは高校生の時に学生服姿で参加なさった第1回都山流尺八本曲コンクール全国大会で金賞、1994年度(平成6年度)文化庁芸術祭賞(音楽部門)、2014年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞、2019年度芸術選奨文部科学大臣賞(音楽部門)と賞をかさねてこられました。その間には、ご自身による創作作品の発表もございました。また、今年は東海テレビ文化賞という地元の放送局の賞も受賞なさり、かさねがさねおめでとうございます。
 新型コロナがはやり始めました2020年2月から3月にかけまして行われるはずでした文化庁の芸術祭や芸術選奨の贈賞式や祝賀会が中止になり、選奨を受賞なさった峰山さんにお会いしてお祝いを申し上げることもできませんでした。今回は、このように大勢のお客様に会場においでいただきその喜びをお伝えすることができて本当に良かったと思っております。
 実は来年度から文化庁芸術祭の参加公演・参加作品の贈賞が無くなります。これまで多くの演奏家の皆さんを支えてきた芸術祭の贈賞だと思っておりますので、これが無くなりますことはとても残念でございます。私も永年芸術祭賞の審査員としてかかわってきましたので、何か代わりになるものができないか、今、伝統音楽に関わるみなさんとともに文化庁に要望書を提出したりしております。
 野村峰山さんも芸術祭での受賞を重ねられ、芸術選奨を受賞なさって、このたびの重要無形文化財保持者のご認定に至ったのだと思っています。野村峰山さんのあとに続く多くの演奏家たちのためにも、こうした顕彰制度のことをこの場にいらっしゃるみなさんにもご理解いただき、ご支援いただければ嬉しい限りでございます。
 最後ではございますが、野村峰山さんがご自分の腕をさらに、保持されていかれることはもちろん、次代を担う人材の育成や、新しい作品の創作、他流との交流、代表を務めていらっしゃる「日本尺八演奏家ネットワーク」の輪を広げていってくださることを期待しております。 
 峰山さんはじめ、ご家族の皆様に幸多いことを記念いたしまして私のご挨拶とさせていただきます。本日は本当におめでとうございます。

 

・鏡開き
 主催者、野村峰山師、祐子夫人はじめご来賓16名により鏡開きが行われ、日本伝統文化振興財団顧問・藤本草様のご発声で高らかに乾杯しました。

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賑やかに鏡開き

 

・藤本草様の乾杯のご挨拶
 皆さま、こんにちは。
 ただ今、ご紹介いただきました、東京からまいりました藤本です。
 乾杯の前の話は短くということでございますが一言だけ…、私も、峰山さんの先ほどのスピーチを聴いていて、まさに感無量という言葉しか浮かびませんでした。
 今日、この乾杯の発声の前の一言というので調べてみましたところ、私がこの名古屋の地で、亡くなられました野村正峰先生と「野村正峰の世界」LPレコードの第一集を録音したのがCBCのホールでした。
 録音して発売したのが1982年、ちょうど今から40年前なのですね。その40年前のCBCのホールでの録音にいらっしゃった正絃社の方はいらっしゃいますか?(ハイ、ハイと手が上がる)
 あ、いらっしゃいますね! あの頃の私は体重も〇キロ少なくて、もっとスラリとしていたのですが、40年経つとこういう立派な体格になってしまいました。   
また、それより遡る前年の1981年、その年に先ほど紹介されました「尺八1979」のLPレコードが発売になりました。その頃から、峰山さん、祐子さんとのお付き合いで、もう40年を越えます。
 そのころの峰山さんは、まだ20代半ば、祐子さんがちょっと姉さん女房で、正峰先生が先に峰山さんを養子に迎えられて、お二人が姉弟(戸籍上)で結婚したと、正峰先生からその頃お聞きしました。今日の日を迎えて正峰先生がご覧になったら何とおっしゃるかなと、本当に胸がいっぱいになります。
 名古屋の方々も本当にお喜びかと思いますけれども、先ほど加納先生からご紹介がありましたように、日本の伝統音楽は必ずしも今恵まれた環境にはおかれておりません。人間国宝というのは本当に重責だと思いますが、ぜひ、発信する、峰山さんらしい聡明な、行動力のある人間国宝として、日本の伝統音楽をより良い形にする活動も、ぜひ、期待したいところだと思っております。
 長くなりましたが、本日の乾杯の発声にうつりたいと思います。
     ~・~ 起 立 ~・~
 それでは、諸先輩おられる中でたいへん僭越でございますけれども、野村峰山さんのこれからのますますのご活躍、素晴らしい演奏をお聴かせいただくことと、ならびに今日ご来名の皆様の、コロナ禍のなかではありますが、皆さまのご健康とさらなるご活躍を祈念いたしまして、乾杯したいと思います。
 ぜひ、ご唱和ください。
 野村峰山さん、人間国宝、おめでとう! 乾杯!

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乾杯のご発声の藤本草様

 

 祝電の紹介、しばらくの歓談タイムののちは尾張の芸能を紹介するアトラクションとして、「尾張万歳」の皆様による『御殿万歳』、民謡蟹江尾八会による『民謡祝い尽くし』、正絃社合奏団『愛と祈りの調べ』、竹の新撰組が野村峰山編曲のポピュラーメドレーを演奏しました。
 祝賀会も終盤に入り、野村峰山門下生による峰山会から花束と御祝が野村峰山師に贈呈されました。

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峰山会から花束贈呈


 と、ここまでは順調に運んできた祝賀会でしたが、実は何と、この早朝、母・秀子が腕を骨折するというアクシデントが発生し、野村哲子が母に付き添って病院巡りの末、ようやく会場に駆け入るというハプニング。そこで急遽、事情説明に野村家全員が舞台に上がり、皆さまにご挨拶申し上げる予定外の展開となりました。

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想定外の野村家ご挨拶

 

・森田柊山理事長謝辞
 祝賀会の締めくくりには、都山流尺八楽会の森田柊山理事長から謝辞が述べられ、和やかにお開きとなりました。

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森田柊山謝辞

 

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野村峰山・祐子・四代ご宗家・森田柊山理事長のお見送り

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