各地の活躍 Vol.2 ~うたまくら343号より - 正絃社

各地の活躍 Vol.2 ~うたまくら343号より

各地の活躍 vol.2 *写真はクリックで拡大します

長栄座伝承会「むすひ」
   長栄座公演に出演して  水野 優子

 2023年8月5日(土)・6日(日)、滋賀県立文化産業交流会館のイベントホール内特設舞台・芝居小屋にて開催された長栄座「むすひ公演」の第2部「駅名連歌 まいばらはつ」 に出演いたしました。

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長栄座の舞台


 2021年より3年計画で始まった「まいばらはつ」の企画は、今年が集大成の3年目。
 米原を起点に京都線、東海道線、北陸線の列車旅をするストーリーで、びわ湖に棲む多聞翁と名付けられたおじいさん亀の各駅停車の旅です。
 一年目は米原から京都で20駅23曲、二年目は米原から名古屋16駅19曲、そして三年目は、米原から北陸新幹線延伸開業も近い金沢への旅13駅19曲。ひと駅ごとのオリジナルの作詞に、作曲は今回も祐子先生。各駅の曲は短いのですが、何しろ駅の数が多いので、毎回30分ほどの大作・・・なので、演奏も曲を聴かれるお客様も、大変疲れるのでは…、という心配も無用。祐子先生は、演奏者、お客さまのどちらも楽しめるように曲を作ってくださいました♪
 演奏者は、亀の多聞爺を演じる琵琶・三絃の祐子先生、尺八には琴古流の川崎貴久さん、そして箏・十七絃・三絃に滋賀県実演家養成所講座でともに研鑽を積んできた私たち「しゅはり」 のメンバー12名が参加するのです。練習開始は4月、初回練習から早くも気合が入ります!

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尺八の川崎貴久さんを囲んで
(右から2番目水野さん)


 メンバーは、持ち前の箏・十七絃・三絃だけでなく歌も歌い、時にはハンドベルや木魚、太鼓などの打楽器に加えて今回は、団扇を使った振り付けあり、セリフもあり、笑いとスピードで楽しくも大忙しな一曲です!
 最初のうちは、あまりに多彩な楽器演奏に、持ち替えが間に合わなかったりして、「本当に弾けるようになるのかな…」と不安がありましたが、祐子先生の細やかな指導と、気心の知れたメンバー同士がお互いに意見を出し合うチームワークで、徐々に出来上がっていきました。
 賑やかな意見交換で練習ごとに良くなっていく演奏が楽しく、あっという間の三ヶ月でした。
 そして、いよいよ迎えた本番。
 公演の第1部には、人間国宝として特別出演の峰山先生と祐子先生による「鶴の巣籠」と「鳰の海に」。鳥を共通とする選曲ですが、演奏形態が違うのが聴きどころで、「鶴の巣籠」は峰山先生が舞台で尺八を独奏される、その屏風の裏で祐子先生は「地」という同じパターンのフレーズをひたすら繰り返す合奏。同じ繰り返しでも飽きないのが不思議です。

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峰山先生と祐子先生

 舞台裏でスタンバイしているしゅはりメンバーは、お二人の演奏に夢見心地に・・・。きっと客席のお客様方もうっとりされていることでしょう。満席の会場の熱気が伝わってきます。
「あのように弾けるようになりたい!」という壮大な夢を再確認しつつ、慌てて自分たちの準備に(笑)
 第2部への転換の幕間には地元の小学校の生徒さんたちが峰山先生作詞作曲の「ひとつのまゆから」をご披露し、インタビュー。20年ほど前の委嘱作品とのことですが、今でも賤ケ岳ロープウエイで小学生の演奏が流れているそうで、地元に愛される歌のエピソードに感動。
 さて舞台セットが整い、いよいよ第2部開幕。
「お客さまに楽しんでいただきたい!」という一心で、ニコニコ笑顔での演奏を心掛けました。  
演奏に合わせて浴衣姿の子どもたちの合唱が入るのですが、私たちの後ろに並んでいるので振り返ってみることはできませんが、指揮者の先生が適格に指示を出して子どもたちの歌を誘導されていました。
 加えて、子ども日本舞踊のワークショップでお稽古した子どもたちが入る曲では、踊りの所作より演奏が速くならないよう、演奏速度に注意が必要でした。このコラボレーションを経験した子どもたちが、いつか将来の日本の伝統芸能の担い手となるよう、私たちも後進の育成に少しはお役に立てた気がしました。
 ところで、曲の後半で私は独唱があり、緊張に負けまいと集中していたのですが、途中、ふと前列のお客さまと目が合いどうしようかと思ったら、ニッコリ笑い返してくださいました。不謹慎かもしれませんが、客席と舞台が繋がる気持ちを味わい本当に嬉しかったです。笑顔っていいですね☆
「まいばらはつ」には私の独唱だけでなく、メンバーそれぞれに何か活躍する場面があり、皆さんドキドキしながらも、任せられた演奏を果たすため練習を重ねてきました。
 司会の講談師・玉田玉秀斎さんが解説される時に、「曲の途中での掛け声や拍手も大歓迎です。」と話された効果もあって、曲に合わせて手拍子を打ったり、客席のノリもよく和やかな雰囲気に包まれ、演奏者側も気持ちよく演奏することができました。

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舞台で使う小道具を手に

 こうして無事に演奏を終えてホっとしている中、舞台では第3部、山田流の大家・萩岡松韻先生主導による「響鳴」 が始まりました。
 日本三大弁財天と十五王子をテーマにした格調高い歌詞で、有名な江ノ島、厳島、竹生島を題材に、こちらも「まいばらはつ」同様、2021年から3年計画でスタートしました。幅広い日本の伝統芸能のコラボレーションで箏曲、長唄、能、それに現代舞踊のダンスの構成で、この企画の集大成にふさわしい、素晴らしい演奏の舞台でした。

 歴史ある長栄座の舞台での演奏の機会をいただきまして、ありがとうございました。ご関係者の皆さまに心より感謝申しあげます。3年間の貴重な経験を糧に、今後もより一層精進してまいりたいと思います。
       (尾張旭市・直門・准師範)

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くらしきジュニア伝統芸能祭 20周年記念公演  渡 谷 元 子 
        
 猛暑という言葉では片付けられないほど暑い今夏、8月27日。
倉敷市芸文館では「くらしきジュニア伝統芸能祭20周年記念公演」が開催され、子供たちによる熱い舞台が繰り広げられました。

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ジュニアの皆さん

 倉敷市では今やすっかり夏休みの恒例行事となった「くらしきジュニア伝統芸能祭」ですが、この行事は《我が国に残る貴重な伝統芸能をぜひ後世に残したい》という要望で倉敷市文化連盟が企画し、少ない予算の中、指導者の先生方の熱意によってスタートしたものです。
 実は私は、第一回から主催者として携わってきました。日舞・邦楽・吟詠・剣詩舞・民謡・民舞・太鼓など、多分野で育ちつつある若い芽に発表の場を与える『小さいけれど大きな意味のある舞台』と考えています。
 ところで、この記念すべき周年の20回目、これには何か意味のある企画をということで、出演するすべてのジャンルの子どもが参加できる曲を、野村祐子先生に書いていただくことになりました。
 というのは、祐子先生には10回記念公演の折に、倉敷の民話をモチーフにした歌・邦楽・舞踊の総合劇「銀のつづら」(文化連盟前会長・室山貴義作詞)と、箏曲・三味線・尺八・太鼓の大合奏曲「子どものための嬉遊曲」を作曲していただいており、この2曲が大好評大絶賛でしたので、今回の20回記念も「ぜひ祐子先生に依頼したい」となったのは必然でした。念のため申し添えますと、この2曲のうち「子どものための嬉遊曲」は、第10回以降、フィナーレ曲として毎年、演奏され親しまれているのです。
 そして今回のために出来上がった曲の名は、「倉敷えーとこ巡り」。

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「倉敷えーとこ巡り」合同演奏


 地元・倉敷への愛を歌詞に折り込み、名所名跡名物を歌い込んだもので、ご当地ソングともいうべき歌曲。太鼓も賑やかに、踊りも振付けて地元の曲として長く歌い継がれること、間違いなし‼ 倉敷市民として、皆がこの曲をいろいろな場でPRすべきと意気込んでいます。
 幕間のご挨拶にご来場された倉敷市長さん、この曲を聞くために上演時間を確かめて、再び駆けつけてくださいました。
 子どもたちの演奏に感動され「このCDはないの?」と尋ねられたほどです。

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倉敷市長さん(左側)と渡谷さん(右側)

 さて公演のプログラムは、幕開けに祐子先生作曲の「華舞歳々」。私が門人とともに指導に当たっている清心女子高等学校・中学校箏曲部の演奏に、太鼓が加わった元気のよい合奏で、幕開けから一気に観客の目を惹きつけました。

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太鼓とともに「華舞歳々」


 次には舞踊・民謡・吟舞など各ジャンルの個別発表、そして中盤に今回のメイン曲「倉敷えーとこ巡り」のご披露。この幕間に司会者が作曲者へインタビュー、邦楽を次世代へ伝える思いをお話しいただきました。
 祐子先生には前日のリハーサルから立ち会って指導していただいたので、作曲者から直接のアドバイスに子どもたちはとても嬉しそうでした。自信を持って弾くことができ、忘れられない思い出になったことでしょう。続いてまた個別発表ののち、定番となっている出演者全員での「子どものための嬉遊曲」で幕を閉じました。

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「子どものための喜遊曲」


 今回の出演には、「くらしきジュニア伝統芸能祭」を巣立っていったOB・OGも参加して舞台を盛り上げてくれました。種蒔きから若い芽が育ち、やがて大樹にまでなってほしい…、今日の舞台がその一歩になってくれれば、と願って続けてきたことを実感できた舞台。こんなに嬉しいことはありませんでした。
次には30回、40回を目指して邁進していきたいと思います。

(倉敷市・岡山正絃社&倉敷琴友会会主・大師範)
 

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