トピックス - 正絃社

各地の活躍 Vol.1 ~うたまくら344号より

各地の活躍 

*写真はクリックで拡大します。

いしかわ百万石文化祭2023「邦楽の祭典」に参加して  野村倫子

 10月14日(土)~11月26日(日)まで石川県で開催される、第38回国民文化祭 第23回全国障害者芸術・文化祭 いしかわ百万石文化祭2023の「邦楽の祭典」に正絃社総勢31名で参加し「組曲 きたぐに」を演奏しました。
 演奏会参加が一番の目的なのですが、私達六人(伊藤洋子さん、河北裕子さん、石原未祐己さん、幹人)は、今回のもうひとつの目的として、石川県能登半島の最先端にある珠洲岬の「青の洞窟」へ行くことにしました。
 そこは、日本三大パワースポットの一つであり、“聖域の岬”と呼ばれ、何かしらパワーがもらえるかとの魂胆です。(あと二つは静岡県・富士山、長野県・分杭峠)
金沢まで特急「しらさぎ」で3時間、そこからレンタカーで3時間、幹人がドライバーです。途中「千里浜なぎさドライブウェイ」という砂の海岸を車で走れるところも寄り、気持ちも高まります。

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気持ちの良いなぎさドライブウェイ


 長い道のりを経て訪れた珠洲岬は、今年6月に政府から「局地激甚災害」に指定されるほどの地震があった地域でしたが、特例措置で復旧がおこなわれたこともあり、目に見えての被害はあまりわかりませんでした。
 日本海の荒波と強風にさらされた樹木は、斜めに伸びていましたが、耐えてしっかりと伸びた枝に力強さを感じました。

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強風にさらされた樹木とともに

 そして結構な高低差を降りて入った「青の洞窟」は、まさに幻想的で神秘的な空間。洞窟内に差し込む優しい太陽光とライトアップのブルーが織りなすコントラストが非日常な空間を作っていました。

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パワースポット「青の洞窟」


 来てよかった~、自然の神秘的なパワーをたくさんもらい演奏会に挑みます。金沢に戻る途中の穴水で一泊し、気持ちを演奏会モードに切り替えます。
 金沢音楽堂・邦楽ホールという邦楽専用の会場に着き、楽屋でお馴染みの皆さんとご挨拶。東京から、兵庫からのメンバーもいて正絃社の全国区ぶりを実感します。
 全員、貸し箏を使用するのですが、皆さん手際よくセットし、そして合奏団のビッグスリー(佐野亜子さん、水野優子さん、兼岩展子さん)を筆頭に、終わったあとの片付けの留意点を訊き、片付け場所に柱箱、琴カバーを移動するのもササっと行われていました。これは地元の楽器屋さんにも大変感謝されました。
 はじめから終った後のことを考える鷲津紀子先生の教えが広く根付いていると思った次第です。
 翌日はいよいよ本番です。
 私が楽屋に入ると、富山の水谷佳代さん、市田和恵さんが、応援に駆けつけてくださり、また正絃社の強い結びつきを感じました。

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左より市田和恵さん、水谷佳代さん、倫子、水野利彦先生


 哲子家元補佐の監督のもと、榎阿礼さん、後藤亜也さん、古川久子さん、鈴川悦代さんが調絃を進める中、残りの皆さんは哲子補佐提案の虹色に並ぶ写真(今回の着物は各自お好きな色無地に銀帯でしたので各色揃いました)の準備です。

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虹色の着物に並んで


 和気あいあいとした楽屋のひとときもあっという間、楽器も人も舞台へ、いよいよ本番です。
 先週、日本三曲協会秋季演奏会(国立劇場さよなら公演)での演奏(10月7日)で同曲を演奏したメンバーもたくさんいたので、気持ちは落ちついていました。
 心地よい緊張のなか、十七絃の低音から31人の大合奏が始まります。皆、心をひとつに家元の指導の言葉一つ一つを思い出しながら、曲の魅力を引き出す最大限の演奏ができたと思います。幕が下りたあとの皆さんの満面の笑顔が出来映えを物語っていました。
 手際よく片づけをおわったあとは、客席へ。今回の「箏曲の祭典」の企画側、石川県箏曲連盟による演奏で、家元作曲の「古都絢爛」を鑑賞します。
 これも私たちの楽しみの一つでした。
 なんとゲスト演奏者のLEOさんが十七絃の独奏、菊重精峰先生のご子息・絃生先生が三絃独奏、ほかにも東京芸大ご卒業された面々ゲストが演奏に加わり、総勢50人くらいの大合奏でした。
 こちらもまた酔いしれるような独奏に、迫力ある大合奏、曲の魅力が存分に発揮された素晴らしい演奏でした。
 終演後、お世話になった石川県箏曲連盟のかたに「素敵な演奏でしたよ。」とお声がけすると、「こちらこそ、素晴らしい曲を作曲していただいてありがとうございました。」と返され、ハナタカになりました。
 ほかにも近江町市場での海鮮や尾山神社の美しいステンドグラス、ここに書き切れないたくさんの思い出ができた素晴らしい旅行でした。
 最後に、演奏には参加されませんでしたが、楽器片付けや本番演奏の撮影などのご協力いただいた嵐 淳さん、そして初の石川県旅行に行きたい為に同行してくれたわが夫・水野利彦に、正絃社を応援してくださる家族のパワーもかみしめたのでした。(家元補佐)

 

**追伸

 このたびの令和6年能登半島地震被害お見舞い申し上げます。国民文化祭を機に訪れた各地が、このような甚大な被害を受けて驚いております。 被災地では現在も多くの方が不安な時を過ごされていることと存じます。 被災された皆様のご無事と、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

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月の灯夜
~月見茶会&邦楽のしらべ~
              水野 あい子

 令和5年9月30日、岐阜県山県市文化の里「古田紹欽記念会館」にて、山県市教育委員会主催の題記のコンサートが開催されました。
 月月に 月見る月は 多けれど
    月見る月は この月の月  
と歌に歌われた中秋の名月の茶会と邦楽のセットで、出演者・野村祐子先生、野村云山(幹人)先生の写真入りのチラシが市の広報に掲載され、①午後5時30分~と②午後6時40分~の2回公演でしたが、チケット発売日の朝一番で完売になってしまうほどの人気の高さでした。
 さて当日、「邦楽のしらべ」は名月と供に、と野外ステージが組まれていましたが、雲行きが怪しくなってきて急遽、隣接する「花咲きホール」での開催となりました。
【プログラム】
 1 旅路     野村正峰作曲
 2 月の灯    野村幹人作曲
 3 秋のメドレー 
~里の秋 虫の楽隊 村祭り~
 4 風の踊り子  野村祐子作曲
 5 月のメドレー 
~荒城の月 月の砂漠 炭坑節~
 心に染入るような澄んだ箏、尺八の音色は言うまでもなく、秋と月のメドレーは祐子先生がご自身で歌われ、その美しい歌声にうっとりと聞きほれてしまいました。
 家元祐子先生の観客をひきつけるトーク、また、云山先生との軽妙な会話のキャッチボールが楽しく、至福のひとときを過ごさせていただき感謝申し上げます。
 併せて観客の方からの感動のお便りを紹介させていただきます。
《お便りより》
 中秋の満月の夜に琴の演奏と月見茶会があると伺い、風流な催しに魅せられて初めて参加させていただきました。
 当日はあいにくの雨模様で、満月と琴の音色を同時に鑑賞することは叶いませんでしたが、広々とした花咲きホールでゆったりと演奏を楽しむことができました。
 秋をテーマにした選曲「秋と月のメドレー」では野村祐子家元、野村云山先生の親子共演ならではの息のあった合奏が大変耳に心地よく、贅沢なひとときを楽しませていただきました。
 祐子先生が作曲された楽曲「風の踊り子」はどこか懐かしく、郷愁の思いがこみ上げてきました。
 云山先生の説明で尺八には長短があり、音の高低により音色が異なると知り、聴き比べができたことが良かったです。
茶会では秋の夜を演出した道具仕立てで、もてなしていただきました。立礼席に掛けられた古田紹欽先生直筆の軸「まるくまんまるく」が、雲に隠れて見えない今宵の月を、目の前に浮かびあがらせてくれました。心尽くしの一服に琴、尺八の美しい音色の余韻とあいまって心が澄む思いが致しました。有難うございました。 (岐阜市・生駒美江)

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演奏の楽しさ満喫の秋 竹 内 裕 美 

 令和5年10月7日、国立劇場小劇場にて開催された「日本三曲協会秋季三曲名流演奏会」に出演させていただきました。
 正絃社が日本三曲協会に加盟して5~6年になるのでしょうか、東京への出演にお誘いを初めて頂いた時は妊娠中のため、やむなく断念。その後も育児や祖母との同居などで、宿泊を伴う演奏会への出演が難しくなりました。
 子供が5歳になり、祖母との生活にも変化があり、そろそろ県外の演奏会出演に復帰できるかも?と考えていたところ、タイミングよく名流演奏会のお話・・・、何と国立劇場が建て替えのため10月末で閉館、これを逃したら憧れの国立劇場での演奏の夢が叶えられなくなる(汗)ということで、参加させて頂くこととなりました。
 今回の演奏曲は正峰先生作曲『組曲きたぐに』。外に出ると溶けてしまいそうなくらい暑い夏の日に、真冬の寒い雪道を想像しながら弾く、というリハーサルを名古屋で何度も重ねて、東京での前日リハーサルを迎えました。
〝初めまして〟の方や久しぶりにお会いする哲子先生はじめ関東・東北の皆様、尺八の先生方とも合流して全員での合奏練習では曲の速度感や間の取り方を確認、そして練習後は前夜祭。
 お開きには知る人ぞ知る『正絃社音頭』を曽我哲山先生からレクチャーしていただき大盛り上がりでした♩
 翌日はいよいよ本番、徒歩で会場へ向かっていると『初代国立劇場さよなら記念』と書かれたのぼりが見えてきました。

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竹内裕美さん


 楽屋口では、歌舞伎公演中の大劇場と隣合わせの靴箱に有名役者さんの名前があり、舞台裏の通路の雰囲気や他流派の先生方とのご挨拶に、次第に緊張感が高まります。どちらかといえばレトロな楽屋でしばらく過ごし、ついに本番の時間が・・・。回り舞台の上でスタンバイ、隣に座られた尺八の先生方がそっと声をかけて下さったお陰で、ほどよい緊張感だけを残した状態で演奏を始められました。

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レトロな楽屋にて


第一楽章『吹雪の海』
 十七絃の弱音から始まる出だしの2小節、クレッシェンドするピッチカートが静かな会場に一気に広がり、そこに他のパートが加わり迫力が増しました。
第二楽章『雪の山寺』
 峰山先生の尺八と倫子先生の十七絃によるソロの楽章。静かで凍りつきそうな雰囲気の中、時々鋭く迫る音に吸い込まれてしまいそうになりました。
第三楽章『街の夜』
 ひっそりとした夜の雪道で車のチェーンを引きずる音がチャリンと鳴る情景は、箏の高音の響きが印象的な場面です。
第四楽章『残雪の道』
 長いきたぐにの冬も終わり、最後は少し明るくやわらかな春の兆し・・・、演奏も終盤に近づき、曲調と同じで私自身もホッとした気持ちで、無事、憧れの舞台を終える事ができました。
 聞きに来てくれた友人からは、
『雰囲気がよく伝わってきて聴きやすい曲&演奏だったよ♫』
と好評で、またホッとしたのでした。
 この日は合奏団メンバーの水野さん・兼岩さんと一緒に哲子先生のお宅へ・・・、4人の打ち上げは焼肉、その後は銭湯で癒やしの時間。お風呂上がりのコーヒー牛乳が最高でした♩ 翌日のお寺巡り・代官山のスイーツと、哲子先生、楽しい時間をありがとうございました。
さて、10月末で閉場された国立劇場の気になる今後はというと…。『4棟の建物(大・小劇場、演芸場、事務棟、伝統芸能情報館)を全て取り壊し、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の手法で、劇場のほか、民間経営のホテル、レストランなども入った施設を整備する。再開場は2029年秋の見込み。』(公式HPより)とのことでした。当日公演のチケットが無くてもロビーに出入りすることができる、グランドロビーを新設されるようです。5年後の完成が楽しみですね!
楽しかった東京遠征から帰宅し、余韻に浸りながらあっという間の1週間…、10月13日、名古屋市東文化小劇場にては「民謡端唄・蟹江尾八会」の舞台に正絃社合奏団として出演。最初の出番はジュニア合奏『アニメソングを三味線で』。
 子供達と『となりのトトロ、銀河鉄道999、ディズニーソングメドレー』の3曲を演奏。小さな身体に大きな三味線を抱えて一生懸命な姿は、とても微笑ましいです。
 第二幕の『名取三味線合奏 箏と共演』では、海外のフォルクローレを三味線で『アロハ・オエ・コンドルは飛んで行く・コーヒールンバ』。
 軽快なコーヒールンバは、練習も本番も楽しく弾けました。
 次には祐子先生が伴奏される端唄俗曲。唄い手さんの声の高さに合わせて一曲ごとに調絃を替える祐子先生のテクニックは見どころ。
 フィナーレは出演者全員の尾八会オリジナルソング『尾州音頭』で華やかに幕を閉じました。

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フィナーレの尾州音頭

 そして、12月5日には宗次ホールのコンサートへの出演。尺八と箏で巡る日本の四季~人間国宝・野村峰山と正絃社合奏団の仲間たち~です。日本の四季を追うプログラムで1曲目は冬の曲から組曲「きたぐに」。2カ月前の暗譜を掘り起こしました。
 2曲めの宮城道雄作曲「春の訪れ」は峰山先生と祐子先生のデュエットで息の合った合奏、祐子先生のMCも好調です。続いての「春光楽」は峰山作曲の尺八二重奏で幹人先生(尺八の号は云山)との親子共演。
 休憩後は洋装に変わり、和から洋の雰囲気へ。
 夏の曲は冷水乃栄流作曲「脆性ノスタルジア」。3人の演奏者は米原の邦楽実演家養成所の仲間で、現在はマスターコースで五線譜での演奏を勉強しています。

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後半は洋装で

 秋の題材は正峰先生の「胡笳の歌」。峰山先生が尺八のソロを吹きながら、客席横のドアから歩いて登場されると客席の皆さんの目は釘付け、感動の名作です。そして私の出番がまたやってきました。終曲「パンドラ」新作発表です。開けてはいけない箱を開けて世界中に災いが飛び出す、という物語は誰もが知るギリシャ神話。  
 この箱を開ける場面では、箏の左側を弾いたり、弾く側を押えたり・・・、祐子先生から「災いが飛び出すところは、それぞれ自由に弾いてね」と言われ、どんな音になるのかワクワクしました。アンコールにはクリスマスソング3曲、楽しいコンサートが終演し、充実した私の芸術の音楽の秋の幕が閉じました。 

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宗次ホールオーナー宗次徳二さんとともに記念写真

育児との両立は難しく、なかなか思うように行かないこともありますが、今後も地道に学んで参りますので、よろしくお願いいたします。
(半田市・正絃社合奏団OB・師範)

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