トピックス - 正絃社

各地の活躍 Vol.2 ~うたまくら344号より

各地の活躍  *写真はクリックで拡大します。

 箏曲正絃社 加賀の国金沢に参じて奏す    秦 瓢 山 

「気は青山にあり 」彼の地に果つるとも可なりと定め、倫子師率いる箏主力の本隊は名古屋に集結後、敦賀を経て北上し、哲子師率いる竹主力+箏の関東勢は越後を経て南下し、共に一意、加賀百万石金沢を目指した。
 そして、石川県立音楽堂 邦楽ホール「箏曲の祭典」その刻は来た。
令和5年10月15日13時、
 演目 野村正峰作曲 組曲「きたぐに」                
  第一箏  古川久子以下 12名
  第二箏  野村哲子以下 11名
  十七絃  野村倫子以下  5名
  尺 八  曽我哲山以下  3名
総勢31名舞台に陣座してまもなく音もなく幕がスッと上がる。祐子家元の指導で呼吸を合わせるのは礼からと厳しく諭され、練習した通り頭を腰から、1.2.3.4と数えて折り、 また1.2.3.4と数えて戻す。皆の呼吸が一つになっているのを感じる。声には出さぬがオウー、一体感の気持ち良さ。
 この緊張感、舞台でのみ味わえる間、十七絃がドンテントンドントンテンと六拍子の音がクレッシェンドして覆い被さってくる。冬の日本海、白波立てて岩礁に当たって砕け舞い上がっている波。竹の音が低くあるいは高く風となって吹きつけて来る。ここは能登の荒海だ。十三絃群も加わって更に深く三次元化し情景描写してゆく。
 その風は雪を伴って山寺に向かう。金堂の軒先より粉雪と共に舞込むは僅かだが、夜の深まりとともにシンシンと寒さが心まで凍らせてくる。辺り一面真っ白で月の光が蒼い。哲山師の竹と倫子師の十七絃が、せめぎ合い凌ぎ合い、時には寄り添って戦いつつも最後は和して次章。
 冷え切った体には熱めのどぶろくがいい。街の赤提灯が、おいらを誘っている。肴は焼いた烏賊と友でいい。
 時の移ろいは百代の過客、あぜ道に残る雪の合間に蕗のとうが芽を出す。風も僅かに緩み春の近きを教えてくれる。身も心も軽く弾んで終章。
 降りてくる幕に1.2.3.4と数えて礼をする。総勢三十一名は参加社中で最大の人数でありました。尚、野村幹人師は二箏での参加でした。

uta344 kakuchi2 01

金沢国民文化祭にて「きたぐに」

 万雷の拍手の中で、正峰師に出会えた幸運に感謝し、ご一門と舞台にて演奏出来た事を心から嬉しく、爆流涙止まらず。今回は祐子家元、峰山師は不在での演奏でありましたが、完成度の高さに、正峰先生もニタリとお喜びだったと思います。会場の中央付近の客席に水野先生を確認。事前偵察ならばエントリィーを模索か?否、純に加賀のお酒を呑みに来られた。
 ビフォウとアフターを語らずには終われない。
 倫子師企画の前夜祭は、水野先生も途中から入られ、打ち上げと間違ってはいないか、と思う程の差しつ差されつの大呑み会。次の日は昨夜の事はいずこやら、優雅に着物姿でシャラリシャラリ、化粧のノリも良さそうで、恐るべし正絃社女軍団。
 アフターは関東勢と名古屋の若き美女軍団で山代温泉にて、浴し食し飲み忘我の時を過ごした。特にステージで一つの太鼓に、鬼の面を装した荒くれ男たちが叩き出す音は、勇壮ながらも哀愁を感じたのは「一向一揆」というグループ名のせいかもであります。おもわず膝をついて鑑賞した。(お酒で立って居るのがきつかった・・・。)
 次の日は雲一つ無い快晴で、松尾芭蕉の奥の細道「石山の石より白し秋の風」と詠んだ那谷寺(ナタデラ)に向かった。このお寺は八世紀に開寺し前田家三代時に再興されたとある。
 三万㎡に及ぶ敷地、自然のままに近い岩山河池草木は、国の景勝地に指定されており、くすんだ建造物は数百年の年月を経過し歴史の重さを感じさせる。それは自然と違和感なく調和存在していて、暫し『感動で声も出ぬ」を味わった。先の大戦で戦火を逃れ、伝統文化の継承が成されている加賀百万石の深さの一端を感じた。と同時に戦火で焦土化した都市などを思うと平和の尊さ有り難さをも感じた。
 金沢で感じた伝統の継承と熟達した技は、正に絢爛の域にあると、石川県も、さにありとのたもうた。
 最後に石川県箏曲連盟の方々総出にて、祐子家元作「古都絢爛」の演奏があり、出演の竹は二人、関東在の若手がゲスト出演。いい意味で世代交代を感じた。
 旅の終わりは駅近で盃を交わし、後ろ髪を引かれる思いで金沢を後にした。

uta344 kakuchi2 02

左から2番目、秦瓢山氏

 以上で国民文化祭、石川百万石2023参加紀行は終わります。参加なされたお一人お一人に、この地での成果や見聞の想いがあると思います。その想い又の折りに聞きたく存じます。
 本文は真に拙文で参加皆様から、ダメ出しもあろうかと思いますが、某の歳に免じてお許し下されたい。正絃社の皆様、またの逢瀬、お酒など楽しみにしておりまする。
 最後に秀子先生これから寒うなります。転ばんように気をつけてください!
令和5年11月12日記  (正絃社関東支部尺八倶楽部)

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

熱田神宮奉納演奏と滋賀県養成所  川勝 ももこ

〈その一〉恋の熱田(みや)めぐり
 昨年10月22日、長唄の杵屋三太郎先生による熱田神宮奉納演奏に胡弓で参加させていただきました。胡弓という楽器に惹かれてお勉強をはじめて約2年、実は初舞台です。
 朝の熱田神宮は清々しく、天候にも恵まれた良い日です。奉納演奏ということで、先に参拝を済ませ、参拝の場所の横の舞台で準備が始まりました。
「恋の熱田(みや)めぐり」は、江戸時代の伝統芸能に詳しい安田文吉先生が、熱田神宮にまつわる伝説などを盛り込んで作詞された歌詞に、杵屋三太郎先生が作曲。十章から成る構成で、三章に祐子先生のお箏、四章に胡弓、日本舞踊も入り、終章では全員の合奏となる大掛かりな曲。奉納演奏は二回公演で、一回目は先生方のみ、二回目はご門下「杵三会」社中の方が加わる合奏です。

uta344 kakuchi2 03

熱田神宮奉納演奏

 出だしは長唄、日本舞踊、続いて祐子先生の素敵なお箏の音色を聴いているとあっという間に四章となりました。
 胡弓という楽器は三絃に似ていますが、中子先が長く足の間に差し込み固定させます。なにせ初舞台のことで着物、襦袢までは調整したのですが、うっかりワンピース形の下着にしてしまったため、差し込みが甘く胡弓がぐらぐら!? 心中大いに焦り、更に野外演奏での心配予想が的中、風で楽譜がピラピラ・・・(祐子先生が楽譜を押さえてくださいました。)
 あまりにいろいろあり過ぎて却って頭が冴えましたが、準備の大切さが身に沁みた一回目でした。(二回目は楽譜をクリップで留めたり、ワンピースを調整して万全の体制で挑みました!)
 胡弓の弓の引き方、構え方など演奏の姿をもう一度鏡で確認したり、手付のご指導も頂き、日頃のお稽古で注意されていることがやはり出来ていないのだと、大変勉強になりました。このような機会をいただき、祐子先生に深く感謝しております。胡弓の音色を聞いていただく機会が少しでも増えるように、今後も精進したいと思います。

uta344 kakuchi2 04

宗次コンサートにて右端・川勝さん


〈その二〉滋賀県邦楽実演家養成講座
 奉納演奏の前日10月21日は、米原市の文化産業交流会館にて恒例の邦楽専門実演家養成所の開校式。一緒に通っている合奏団のメンバーの後押しもあり、今年は現代曲の演奏を中心により専門的な邦楽を学ぶⅭコースに応募し、2月の演奏会に向けて全8回のお稽古に挑むことになりました。
 祐子先生をはじめ池上慎吾先生、片岡リサ先生、吉澤延隆先生から今年の指導方針のお言葉を頂き、各受講生も一言ずつ自己紹介を兼ねて挨拶。自分自身の演奏をよりよくしたいという前向きな方が多く、基礎をもう一度しっかり勉強したい、演奏技術を磨きたいなど、意欲的な目標をもつ方が多くいらっしゃいました。
 開校式終了後は、早速はじめてのお稽古。
 Ⅽコースは現代曲ことに五線譜での演奏に重点をおいており、最初は調音(お琴の音を聞いて五線譜に採譜)と五線譜のリズム(八分音符、休符、スラー)の勉強でした。小さいころのピアノのレッスンを思い出しつつ、五線譜をお箏で弾くことの難しさに格闘する時間でした。
 午後は、2月の演奏会で披露する「水煙風鐸」(長澤勝俊作曲)について、池上先生が風鐸の情景をどういう風に表現していくか、メロディやパート毎に解説くださいました。どの角度でお爪をあてたらどういう音になるのかなど、細かく指導してくださり、先生が弾かれると簡単そうに見えるのに、いざ弾いてみると同じようにはならず・・・、毎回勉強、勉強の積み重ねです。
 2月の養成所演奏会に向けて、気持ちを新たにした一日でした。(名古屋市・直門・准師範)


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

やっとかめ文化祭に参加して  兼 岩 展 子

 昨年11月4日(土)昭和文化小劇場にての、~2023なごや文化の扉をひらく。やっとかめ文化祭DOORSまちなか芸披露~民謡・尺八・津軽三味線「未来へ受け継がれし和の音色」に出演させて頂きました。 

uta344 kakuchi2 05

国立劇場にて左端・兼岩さん

 これは、正絃社合奏団でいつもお世話になっている民謡の蟹江尾八先生からのお声掛けで、正絃社合奏団から佐野亜子さん、水野優子さんと私の3人での参加です。このような機会は、私にとってはプレッシャーもありましたが、異色なコラボレーションは楽しみでもありました。 
 プログラムは第1部が【民謡ステージ】【尺八ステージ】、第2部が【津軽三味線ステージ】と【合同演奏ステージ】の4つの舞台から構成されており、私たちの出番は【民謡ステージ】の中の「三味線と箏によるアニメソングメドレー」と、【合同演奏ステージ】の「戦場のメリークリスマス」より〝Merry Christmas Mr.Lawrence〟 です。
 民謡ステージでは、まず尾八会の可愛いチビッ子たちの元気な歌声が客席に響き渡りました。続いて箏の私たちが舞台へ出て民謡三味線と箏の合奏で、ジブリ、ディズニーソングなどのメドレーを演奏。蟹江社中の花形のしほさん、礼子さんの美しいデュエットで民謡ステージを締めくくりました。

uta344 kakuchi2 06

民謡ステージの共演

 次の尺八ステージは「加藤条山と仲間たち」と題するコーナー。ベテランから大学生までの幅広い年代の演奏者で、コンサートタイトルの「未来へ受け継がれし和の音色」を感じさせます。
 後半に入り津軽三味線ステージでは、神谷茂良先生率いる「和胤の会」と名古屋西高校津軽三味線部「音見習い」による力強い合奏で、津軽じょんから節やオリジナル曲5曲をご披露。
 そして最後の全員合同演奏ステージは、昨年亡くなられたミュージシャン・坂本龍一作品のコラボレーション。ふたたび私たちの出番です。人数も多く大迫力の舞台となりました。 
 ところで、この大合奏のリハーサルはコンサートから2カ月ほど前に一度行われ、あとは当日の午前中のみという僅かな回数。「さすがプロ!」と鼻タカなところですが、実は初めての顔合わせで舞台後方の山台にずらりと並んだ高校生20人以上の津軽三味線の大音量にかき消されそうな中で、尺八、民謡三味線の音を聴き分ける状況に、正直に言ってドキドキしました。
 その不安なままで迎えた当日、午前中に行われたリハーサルではハプニングもあり、本番はどうなることかと思いましたが、幸いにも無事に演奏を終えることができ、過ぎ去ってみれば楽しい思い出のひとつとなる経験でした。
 家元がいない演奏会は初めてのことで(何と客席にいらっしゃいました)、楽屋入りや準備に不備はないかと確認に確認を重ね・・・、他の出演者やスタッフへの挨拶など、正絃社の評価を落としてはいけない、というプレッシャーもありましたが、いろいろな曲への挑戦で貴重な経験をさせていただきました。
 ここ最近、お箏がとっても楽しいです!
 もっと上手くなりたい、こんな風に弾きたい、こんな音色を出したい、と欲張りになっています。昨年末には宗次ホール正絃社合奏団コンサート、新年早々の熱田文化小劇場新春初えびすコンサート、2月には米原の文化産業交流会館にて行われる滋賀県邦楽専門実演家養成所発表会への出演など、少しでもよい音色で演奏できるよう練習に励んでいます。
 今後も、より一層お稽古に励み、少しでも理想に近づけるよう頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。(名古屋市・直門・准師範)

このページのTOPへ