幹部会便り ~うたまくら323号より
【幹部会便り】
豪雨と七夕合宿 大澤 みどり
7月7・8日に本部の合宿が行われました。会場は蒲郡の「ホテル竹島」。目の前に三河湾が広がり、ぽっかり浮かんでいるような竹島には橋を歩いて渡れます。そしてクラゲが踊り、ダンゴ虫のようなオオグソクムシにタッチできる竹島水族館も近くにあります。
この観光地に正絃社会員、尺八の方々あわせて、約60名が参加しての合宿でした。特筆すべきことは、この日は、大雨特別警報が出された平成史上最悪の豪雨となった日だったのです。
前日も心配で、交通機関は止まらないのか、九州、東京、遠方の人は参加できるのかと不安でいっぱいでしたが、幸いにも、あまり影響もなく、ほとんどの人が時間どおり集合できました。
思えば本当に蒲郡で良かった。岐阜の下呂方面を会場にしていたら、中止か帰宅困難になっていたはずです。これはやはり正絃社の皆さんの日頃の行いが良かったとしか思えません。
被災地の方に申し訳ないのですが、合宿は、豪雨を忘れるほど楽しく有意義なものでした。
初日の7日は全員が三絃で「越後獅子」を勉強。哲子先生の丁寧な音階解説から始まり、流れにのって弾くことや、強弱をつけた弾き方などを指導していただき、左手の指使いに関しても「手のひらは駒の方向を向くように…」など、誰でもわかる具体的で明快な指導と話術に引き込まれてしまいました。
一方、祐子先生は受講者の間を一人ずつ廻って三絃の調整や調弦確認をして下さり、これまた至れり尽くせり。休憩を挟んで次には、祐子先生のお箏と別室で練習をしていた尺八の皆さんが加わって、ボリュームのある合奏練習。
「越後獅子」研修
合奏体験を満喫したのちに、祐子先生、哲子先生、峰山先生による模範演奏の「越後獅子」を聞かせていただきとても充実した時間でした。
とくに、
「あの模範演奏がタダで聞けるなんて、本当に素晴らしかった。有料でも聞くべきだよ。」
と、熱く語る尺八の参加者の声を聞いた時、私たちが恵まれていることを、再確認すると同時に合宿に来てよかったと思いました。
また尺八の先生からこんな声も聴きました。
「箏との大きな違いは、三絃はツボを押さえて自分で音を作る楽器。だから音を揃えることが難しい。それなのに、正絃社の皆さんの越後獅子は、見事に全員の音がぴったりそろった、素晴らしい演奏で感激した。正絃社の演奏力は凄い」と…(お世辞かな)。
ほかでの演奏レベルと比べたことのない私には、その言葉がとても嬉しく、かつ誇らしく思いました。正絃社の素晴らしさを正絃社以外のかたに教えていただきました。
合奏に熱中した夢のような時間は、残念ながらあっという間に過ぎてしまいました。しかしその後の夕食がさらに楽しい宴会で、また夢のような時間の始まりです。
実は私は、約40年ぶりの合宿参加で、すっかり合宿の雰囲気を忘れていましたが、今回の夕食の楽しかったこと…。宴会の最中に登場した「正絃社専属宴会の殿様」が現れた時には大喝采。風采を説明しますと、とにかく金ピカの着物に、見事にお顔にマッチしたチョンマゲ。まさしく宴会の申し子なのです。もちろん殿様には逆らえませんよ。初めは恥ずかしがっていた人も、そのうちハグして万歳して、大盛りあがりの宴になりました。
楽しい宴会で全員集合
まさに、「笹呑め、酒呑め。呑めば心うきうきと~」(新曲「笹祝い歌」より)と、顔もほころぶほろ酔い状態。そしてぜひ皆様にも見ていただきたかったのが、祐子先生の浴衣姿。可愛らしくて、同年代の私としてはちょっと羨ましかった…。
その宴も終わってしまい、いよいよ竹島の見える露天風呂かと思えば、「飲みませんか~」とのお誘い。当然行きますよね。疲れたとか眠いとは言っていられません。
そこで私は恥ずかしながら初体験をします。初『山手線ゲーム』なのです。これは私の脳みそを混乱状態に落とし入れました。実は宴会の時にも脳トレがあり、こっそりごまかしていたのですが、山手線ゲームはごまかせません。とにかく正絃社では頭を使わないといけない事を痛感しました。ボケ防止になって幸いですが。
一夜明けた8日は「笹祝い唄」の練習。個人的には練習不足で不安だったのですが、ある先生に「みんなで演奏するのが楽しいのだから大丈夫。ワイワイ弾けば、一人で弾いている時より上手にひけるから」と言われ、お陰様でおっしゃる通り、楽しく弾けました。これが合宿の良いところでしょうか。
笹祝い唄は全パート60名での大合奏。春の公演でも60名が舞台に乗ることはあまりない事で、楽しいとしか言えません。
40年ぶりの合宿。勉強になり、楽しくそして思うところ多い合宿でした。昔、正峰先生が皆で集まるのが大事、コミュニケーションが大切とおっしゃったとか。今年参加出来なかった方も次回はぜひ参加して、ご一緒に楽しんで下さい。 (幹部会幹事)
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合宿初参加の記 工藤省子
「和の文化」を知りたいという思いは若い頃からありながら、なかなか実行できずにおりました。
地元に戻って間もなく伯母に茶道を習い始め、その生活全般にわたる内容に感じ入り、少しずつではありますが、己れの暮らしにも取り入れています。が、「音曲の要素が足りない!」と感じ、なんとかツテを辿り、やなだ真子先生に箏を教えていただける運びとなりました。
5月に入門したばかりの初心者の私の背中を、先生がぐっと押してくださり、今夏の東北正絃社くりこま合宿に参加することになりました。
急ぎ足で花シリーズ「紫陽花」「すずらんの歌」「花サフラン」「雪椿」の4曲と「ふるさとの風」「愛し子に贈る子守歌」をお浚いして、青森からくりこま高原駅前のエポカへやって来ました。
いつもは1対1でのお稽古ですので、合宿で50人の合奏は圧倒的な迫力でした。
中央・工藤省子さん
また、お家元、峰山先生はじめ諸先輩方々との交流の中にも数々の教えがあり、実りの多い2日間でした。帰りましてから、拙いものではありますが自分で奏でる琴の音に日々親しんでおります。
(青森県上北郡・やな田真子門下)
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初めての合宿に参加して 加藤弘枝
7月21~22日の東北幹部会研修合宿に初めて参加させていただきました。
実は、去年春から箏を始めたばかりで、まだ、一年生ですが、今回の参加にあたり 7曲覚えて挑みました。短期間の練習でしたので、もちろん完璧ではありませんでしたが、先生に、
「行くだけでも勉強になるよ。」
と、声をかけていただいたので、何となく軽い気持ちで参加しました。
しかし、会場の準備で琴を運び、面数を見ているうちに、出発前に抱いていた軽い気持ちが一気に緊張と不安に変わりました。
初日、午前の研修は「花シリーズ」の曲で、和室での合奏。初めての正座に慣れず、もぞもぞしていると、倫子先生が座布団を使って座る方法を教えてくださり、ちょこちょこと休憩をとって下さいました。
和室での合奏
先生方みなさん、堅いイメージを想像していたのですが、
(あれっ、こんなに気さくに声をかけていただいていいのだろうか…)
と、勝手にギャップを感じながらも構えていた緊張が少しほぐれました。
その感覚で臨んだ午後の「春の海」は、あまりの衝撃に、その晩、リピートで曲が夢に出てきて眠れませんでした。
会場で自分が弾く〔第2箏〕のシールを貼ってある琴が見当たらず探していると、2面しかなく、自分が、そのまさかの一人でした。もう一人の〔第2箏〕の人と、
「きわ子先生を呼んでこようか。」
と、相談しているうちに合奏が始まってしまい、大多数である第一箏のみなさんに圧倒され、尺八の迫力にも呑まれて、ぽかーん、となってしまいました。
しかしサプライズで、お家元祐子先生と峰山先生デュエットの「春の海」を聞くことができ、とても感動しました。
常日頃では、こんなに一日中、箏を弾いていたことはありませんでしたが、あっという間で、濃密な時間を送ることができました。
合奏の前に祐子先生に教えて頂いた、爪の当て方や指の力加減などを意識し、自分なりに向上できた部分もあると感じています。
今後、目標を持って、今回得たことを自分のものにできるよう、努力していきたいと刺激された合宿でした。(岩手県・佐々木きわ子門下)
- 2018.11.23