トピックス - 正絃社

各地の活躍 Vol.2 ~うたまくら345号より

各地の活躍 Vol.2(写真はクリックで拡大)

箏の音 日日是好日  ソロコンサート 布 村 聡 子

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布村聡子さん

 1月8日(月・祝)に初のソロコンサートを無事に終えることができました。
 幼少の頃、母から箏の手習いを受けておりましたが、長い期間箏とは離れておりました。
 改めて箏を勉強しなおしたいと、決心をしたのが子供が小学校へ入学する頃でした。そこから約10 年、過去に箏を演奏することをやめてしまったことを後悔し、箏が上手になりたいという強い思いを持ち続け、コンクール、オーディションなど厳しい環境におくことで自分を鼓舞し、舞台経験を重ねて来ました。
 今回のコンサートの選曲は、過去にコンクール等で挑戦してきた曲を中心に、今の自分ならどう改めて表現し伝えていけるのか、視点を変え曲の魅力を伝えたいという思いから決めました。
プログラムは、
1、十七絃独奏のために 華になる
2、鳥のように
3、風の踊り子
4、十七絃独奏による主題と変容“風”
アンコール 十七絃独奏
リュート組曲第4番よりガボット(バッハ作曲)
 何度も聴き重ねてきた曲は、過去の記憶とも結びつきやすく練習をしながら、以前、楽譜に書き込んだ言葉なども相まって当時の感情とも向き合う時間になりました。思うように演奏できない未熟さや、演奏のミス、厳しい結果に涙したことまで。
 当日での演奏は評価される舞台ではなく、お客様が楽しみにして聴きに来てくださるという会場の暖かな雰囲気にとても助けられました。
 そこからは演奏に必死になるのではなく、この曲が好き、この旋律が綺麗など、音を聴き会場の響きを感じる演奏ができました。
 実は「箏の音 日日是好日」という題名は初めから迷うことなく決めていました。
 この10年、私は箏の演奏を続けることができました。自分の健康、家族の事情、金銭面など続けるには状況が許せばという条件付きな立ち位置にある活動ですが、導いてくださった恩師の方々、素晴らしい仲間、支えてくださった皆様のおかげです。それは幸せな日々が続いた証でもあります。
 時にはやるせないこと、ままならないこと、泣いたこともあります。しかし、マイナスな感情も含め自分の糧となり、箏の音が響く人生なら毎日が幸せで良い日だと。今までと、これからを含め感謝と幸せを伝えたく題名をつけました。
 コンサートの運営なども含め、まだまだ至らず未熟な自分と向き合った日々ですが、そこから目をそむけず今後の成長に繋げていけるよう励んでいきたいと思います。 
(茨城県牛久市・小島君代門下・師範)

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組曲「FUHEN」~平和への伝言~邦楽×管弦楽×狂言
賑やかに幕を閉じました

 1月27日(土)、名古屋市芸術創造センターにて2回公演として開催された右記コンサートでは、ピアニスト・佐々木伃利子氏のプロデュースによる企画で、特別ゲストにお迎えした女優・竹下景子さんの朗読に多彩な和洋の出演者総勢百名に及ぶコンサートとなりました。
 オープニングの演奏、野村峰山氏(尺八)の「慷月調」には野村又三郎氏の狂言小舞がコラボ、続いて野村祐子(箏)が八橋検校「みだれ」で古典の世界を描いた次には野村峰山と野村祐子で尺八と十七絃の「高原のオブジェ」(野村峰山作曲)で現代的な空間が演出されました。
 名古屋少年少女合唱団のアカペラ「荒城の月」に続いては尺八の伴奏で子どもたちの平和への伝言が告げられ、再び合唱曲「からすかねもん勘三郎」「いでたちばな」が披露されました。
 後半のプログラムでは、カタロニア民謡「鳥の歌」(チェロとピアノによる作品)が尺八とピアノで演奏され、この曲はカタロニアでは鳥がピース、ピースと鳴くと歌った民謡で、国連の会議で平和を訴えた歌。続いてソプラノ歌手・金原聡子さんの歌で「アヴェ・マリア」、歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」。
 そしてNHK交響楽団メンバー、NHK名古屋青少年交響楽団、名古屋芸術大学芸術学科弦管打コース特別編成メンバーを指揮する遠藤宏幸氏により「アンダンテ・カンタービレ」(チャイコフスキー作曲)、映画「ひまわり」メインテーマ、「もののけ姫」より「アシタカせっ記」。 
 このメンバーに野村峰山の尺八とピアノが加わりジョン・レノン曲「イマジン」、背景には平和へのメッセージが書かれた幕が降ろされ、最終曲「コン・テ・パルティロ」(君と旅立とう)では出演者全員による大合奏で盛り上がりました。
 これほどの出演者が再び舞台に並ぶことはないであろう、というほどの大がかりなコンサートに客席も満足の一日でした。

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「イマジン」リハーサル

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~滋賀県邦楽専門実演家養成事業~
箏の音色が舞台に響く  安 田 裕 美

 令和6年2月11日、滋賀県立文化産業交流会館小劇場にて開催された、右記事業の演奏会~次世代を担う和楽器アンサンブル~に参加させていだきました。
 第一線でご活躍する講師の先生方による指導のもと、箏・十七絃・三弦の実技を学んだこの養成事業の受講生による演奏会で、邦楽ファンはもちろん、初めての人も楽しめるプログラムです。
《プログラム》
1、今日のよろこび(宮城道雄作曲)
2、岡康砧(岡安小三郎作曲)
3、対話(清水脩作曲)
4、DANCEⅣ(池上眞吾作曲)
5、OKOTO(沢井比可流作曲)
6、水煙風鐸(長澤勝俊作曲)

 この事業は、流派を越えた講師の先生方に、古典や現代曲をアンサンブル形式で学べるという全国的にも珍しい内容で、毎年楽しく受講しています。 
 A、B、Cの三つの中から希望のコースを選ぶのですが、申込み後、どんな曲でパート割はどうなるか、講師の先生やメンバーはどなたに決まるか、毎回ドキドキしています。講師が祐子先生の時や正絃社の方が同じ曲のメンバーの時はとても心強いのですが・・・。
 そして今年、私に振当てられた楽曲の一つ目は、長澤勝俊作曲で飛鳥時代をイメージした曲、「水煙風鐸」でした。風景だけでなく作曲家の心情が込められており、その世界観を表現することが課題でした。

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飛鳥風の衣装で左端・安田裕美さん


 もう一曲は箏二重奏曲「対話」。これは五線譜の楽譜で、様々な副題がつけられた対話をテーマにした現代音楽です。箏譜の縦書きに慣れている私にとって五線譜は初めてのことで、かなり苦戦しました。最初の講義で五線譜の読み方を教えていただき、何とかスタートして、本当に少しずつ弾けるようになりました。
いよいよ迎えた当日、本番では、演奏表現の強弱を意識して、皆さんと息を合わせて演奏、・・・緊張感漂う中、客席から不協和音に反応?した小さな子供の怯えた泣き声が…、どこからか聞こえてきました。
 また、古代の衣装であっと驚かせる演出など、それぞれの曲に合わせて工夫された舞台に、会場は盛りあがり、無事終演。
 毎年、経験豊かで熱心な先生方が、個々の受講生に合わせたアドバイスやグループ全体の指導を行い、技術面や演奏力を向上させるだけでなく、伝統音楽の奥深さや表現することの大切さを教えてくださいます。先生方の目指す演奏を頭では理解しているつもりでも、実践することは、思った以上に難しく、練習を重ねてもなかなかできず、いつも歯がゆいばかりなのですが、皆さんと合奏した時に箏の音色が綺麗に重なって響いた時は、最高に素晴らしくて、頑張って良かったと心から思える瞬間です。
 座学で歴史を学んだり、流派、年代、性別、異なるバックグラウンドの皆さんと一緒に音楽を作り上げていき、リハーサル、発表の場を迎え、お客様に聞いていただくのは貴重な経験で、達成感があります。また、事務局やスタッフの方々は、とても協力的で親身になって対応してくださいます。私たち受講生が演奏に集中できる環境を整えてくださり、大変ありがたかったです。

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和気藹々のメンバー


 充実した学びの場の様子を紙面では充分お伝えしきれないですが、ここでしか味わうことのできない素敵な講座です。多くの方がこの講座に参加してくださるといいなと思います。
 最後に、この事業に携わった全ての方たちと、いつも暖かく見守って協力してくれる家族へ、感謝の気持ちを伝えたいと思います。
 ありがとうございます。
 そして、これからも祐子先生のご指導のもとお箏の音色に癒やされながら、一歩ずつ精進していきたいです。(名古屋市・直門)

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講師の先生方と養成所修了式

 

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