曲目解説(わ行)
わだつみ(わだつみ)/野村正峰作曲
わたつみの 豊旗(とよはた)雲(ぐも)に 入日さし
今宵の月夜(つくよ) 清(すみ)明(あか)くこそ
万葉集巻一 、第十五、中大兄皇子(のちの天智天皇)
わた・・・・和田、古語で海をあらわす
つみ・・・・祗、古語で神をあらわす
この歌は、大海原に夕日が沈もうとしている、旗のように盛んに棚引いている雲は残照に美しく彩られ、一面に凪いだ海には、さざなみが輝いている・・・という情景から、その夜の月の美しさを連想した名歌です。 この曲は「万葉シリーズ」連作の一環として作曲されたもので、海辺の落日の壮大な抒景と、夜更けて海上に昇った月あかりの澄明さを曲想としています。 箏の調弦法には、双調(G)基準の高低オクターブを用い、曲想のもととなる波、雲、月、光などのモチーフを、箏、十七絃、尺八の各パートの、それぞれの音色を生かした表現であらわすように工夫された作品です。
1977年作曲