【311号】うたまくら 皆様からのおたより  - 正絃社

【311号】うたまくら 皆様からのおたより 

サンパウロ日系コロニア 芸能祭に参加して
都山流尺八ブラジル支部 山岡洋雄

~「ブラジル・サンパウロ」市の第五十回コロニア芸能祭における箏・尺八・コーラスによる「五丈原」の演奏について~
 ブラジルでは六月は、1908年、ブラジルへ初めて日本人移住者が到着した月として認定され、毎年、各州や都市で記念行事が開催される慣わしとなっている。
 【ブラジル日本移民107周年記念】と銘打った「コロニア芸能祭」は、日本文化を網羅する大きな行事であり、その出場演目は土曜日が六十番、出演者合計が194名。日曜日が63番、合計出演者数290名。二日間の合計は四百八十四名に登るもので、日本文化の一大エブェント・ショーである。   
内容的には、日本舞踊から剣舞詩吟、歌謡曲、太鼓などの目白押しであるが、三曲の演奏には三つの流派の出番があった。前記した状態の中で、必ずしも三曲演奏に相応しい会場とはいえないものの、その数ある演目の中で、ひと際、存在感を披露したのが「五丈原」でした。
 箏は、斉藤寿美江師(正絃社准師範)を筆頭に十面、尺八は斉藤深山師を筆頭とする都山流支部の五名。尺八の特別ゲストとして、ブラジル邦楽協会会長のシェン・饗盟も出演。コーラスをあわせると総勢四十名が舞台いっぱいに配列。箏・尺八コーラスの気迫の篭った熱演は、会場を圧倒する出来ばえで、演奏終了と同時に、会場は拍手に沸き立ったものである。

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ブラジル人、日系人の入り混じった熱気の舞台

過去に経験した箏・尺八のみの演奏に比べ、比較にならないほど拍手が格段に多かったと思うのは、参加者としての自画自賛だろうか。 終了した後、多くのコメントが耳に入ってきたが、コメントをくれた方々は、皆、二世三世か純ブラジル人である。

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斉藤寿美江師を囲んで、両側は新任のサンパウロ総領事

この、望外の結果を目の当たりにして、ひとつの考えが浮かんできた。
まず演奏者は、箏も尺八も半分は日系かブラジル人であり、コーラスにいたっては、ほぼ全員が二世とブラジル人である。同時に、来場者もまた半分ほどが同じ配分。
私はかつて、伝統的な「六段の調べ」、「千鳥の曲」、「夕顔」などの演奏に参加し、それなりの評価は受けて来た経験があるが、それらの純日本古典曲と比較してみると、コ―ラス入りの曲の方が、格段の差で好まれるのではないかと感じたことである。
それは、この国の国民性と無縁では無かろう。「五丈原」の曲想は、古代中国の『三国志』の世界を舞台にしてはいるものの、何処かに煌びやかさと勇壮さをふんだんに発揮するという展開で、コーラスの言葉は日本語であるにも関わらず、この辺りが日系や一般ブラジル人に大いに受けた原因であろうと思われる。  
この経験を踏まえ、今後はこうした行事には、コーラス入りの曲を選択した方が、成果が大きいのではないか、と感じている。
在伯六十年にして感じたことを伝え、「五丈原」の曲に感謝するとともに本文の終わりといたします。

 

高校生の演奏に感動しました
大西美智子

①おもてなしの心を伝えた 
滋賀県合同 オープニング 
第39回全国高等学校総合文化祭
2015滋賀 びわこ総文 日本音楽部門
日程 7月31日(土) 8月1日(日)
会場 びわ湖ホール            
*琵琶湖が目の前という素晴らしいロケーションの「びわ湖ホール」(滋賀県大津市)で、全国からの高校生が一糸乱れぬ日本音楽を熱演、感動の連続でした。
♪プログラム数
一日目33曲  二日目22曲
合計55曲(そのうち県合同曲4曲)
♪ 大会テーマ
「翔びたとう 創造の翼で きらめく湖から」
♪ 大会の幕開けは、このテーマに因んだ委嘱作品、野村祐子作曲「きらめく湖から」

作曲者直接ご指導の様子は、大会HPで何度か拝見。合同演奏は各校から生徒が集合するだけでも大変なこと、暗譜演奏でこの曲を仕上げるまでどんなに大変だったか、と一人一人に思いをめぐらせて、満席の会場に流れる箏、十七絃、三絃、尺八、二十三名の演奏を聴いているうちに胸が熱くなりました。
素晴らしい幕開け「心で奏でるおもてなし」に、惜しみない拍手を送りました。
この演奏を聴きたくて、妹を誘い、前日から大津入り。近くの源氏物語ゆかりの石山寺に参拝の後、琵琶湖巡りのミシガンクルーズに乗船、心地よい風を受け、湖上を飾る噴水ショーや、光り輝く湖面を楽しみながら、湖畔に佇む美しい演奏会場や宿泊ホテルを眺めたり、とまさに「至福の時間」でした。

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ミシガンの前で大西美智子さん

「きらめく湖から」は、心に刻んだ、この琵琶湖の印象そのままが再現されたような曲想で、湖上のきらめきをイメージしたトレモロに始まり、最後の「びわこ周航の歌」までうっとり、一幅の絵巻物の世界。ミシガンクルーズのお別れもやはりこの歌。歌詞を思い出しながら口ずさみました。
高層ホテルの窓から夕陽を眺め、ディナーも終えてロビーをぶらぶらしていると、なんと祐子先生にバッタリ!一緒に記念写真を撮らせていただきました。

②愛知県の演奏は、今年もトップレベル
 各都道府県を代表するいずれの学校も、難曲に挑戦、暗譜でレベルの高い演奏を披露。コンクールでもあり舞台も客席も張り詰めた空気がみなぎり、拍手が唯一の和み。二日目は鑑賞できませんでしたので、演奏の成績結果は大会HPで知りました。
嬉しいことに、愛知県代表が二校とも上位八校に入賞。
《菊里高校、東海南高校の皆さん、おめでとうございます》
 愛知県大会の審査員である家元は、二日間とも鑑賞され、会場でこの発表を聞かれたとのこと、誇らしく思われたことでしょう。これまで愛知県は、この二校に菊華高校も加え、上位優秀校四校の成績に輝き、東京国立劇場出場の記録を残しています。
*東京公演は平成2年から開催、現在に至る。
*合同演奏は審査対象外となっている。

この全国大会が愛知県で開催されたのは、第十一回目の昭和62年(一九八七年)。受け入れの準備として、昭和60年、愛知県高等学校文化連盟を設立、開催専門部門も発足。しかし合唱、吹奏楽、演劇など連盟組織が確立している部門とは異なり、邦楽関係部門には県内は勿論、全国的組織がありませんでした。
従って組織作りからスタートでした。どこの学校にもある部活動でもない上に、私学は、既に愛知私学としてまとまって活動していましたので、県立、市立とは異なり組織に加入するかどうかは、各学校の判断で現在に至っています。
愛知県大会開催当時、私もこのような大役を引き受ける立場になり、授業のかたわら教育委員会での準備は本当に大変でした。また、当時は、開催県が楽器の準備、調絃、舞台転換まで担当しましたが、このことはとても学校関係者だけでは出来ないことで、正絃社のサポートのお陰でした。現在は、すべて出演校の責任となっています。
全国高等学校文化連盟(事務局岩手県)の設立は昭和61年。昭和52年、千葉から始まったこの大会にも、やっと縦の組織が整いました。
それまでは、各都道府県様々な経緯で出場校を選抜、推薦していました。愛知県では現在、日本音楽専門部として筝曲・仕舞が毎年一月に、県大会を開催して、全国大会出場二校を選ぶコンクールとなっています。年々演奏レベルが高くなっている出演校の審査に、先生方も頭を抱えるほど嬉しい内容に成長しています。
愛知高文連は、毎年八月、県芸文コンサートホールで「アートフェスタ」を開催、今年は日本音楽から藤ノ花、江南の2校が出演しました。設立から、まもなく三十周年を迎える愛知県日本音楽部門の大会は全国にも誇れる立派な高校生の演奏会です。次回の愛知県大会は、来年、1月9日(土)、名古屋市青少年文化センター(アートピアホール)で予定されています。
是非、一度お聴きいただきたく思います。

③野村幹人さん 箏・三絃・尺八で出場
 高校在学中の野村幹人さんは、この全国大会に愛知県代表校として、毎年異なる楽器に挑戦演奏。
一年(2000静岡)では十七絃
二年(2001福岡)では三絃
三年(2002神奈川)では尺八
初出場の静岡大会ではトップ八校に入賞、福岡大会ではトップ四校に与えられる東京国立劇場出演の栄誉に輝きました。当時ご家族から、「幹人が野村家で一番有名になってしまった」と。
三大会連続出場して、三種類の楽器を演奏する高校生は、これからも出ないのではないでしょうか。今の素晴らしい活動がますます、大きく広がりますよう、楽しみにしています。

④最後に、鑑賞を終えて・・・
このような貴重な体験をした高校生こそ、部活動の思い出に終わらせることなく、卒業後も、和楽器を奏でる楽しさを継続し、日本伝統文化を愛する人になるよう心がけて、指導していただけたら、と切に思っています。
(春日井市・直門・大師範)

 

大盛況の各地の新作講習会

・6月28日、ひこねステーションホテルで行われた、都山流滋賀県支部主催による「野村祐子作品講習会」では、「七福神宝船」「古都絢爛」の2曲を講習。
尺八47名、絃方51名、合わせて約百名近い受講者はホテルの宴会場いっぱいに並び、大盛況を呈しました。曲と箏・三絃の指導は祐子家元、尺八の細かな演奏法の説明を幹人講師助手が担当し、三曲合奏の楽しさを満喫する講習会となりました。
・7月12日、奈良県三曲協会主催による「作曲者講習会」では、野村祐子家元を講師に、幹人、山本玉山、室志津代各師の演奏により「古都絢爛」「白秋に寄せて」の2曲の講習が行われました。
受講者の内訳は、箏32名、十七絃6名、三絃11名、尺八52名で、聴講24名を含め、合計125名の参加は、過去最高の参加人数とのこと。講習会場は、天理教大教会の大広間は、熱気溢れる受講者で埋め尽くされました。著名な先生方も熱心に受講され、細かな質問にも対応して、和やかな合奏を楽しむひとときとなりました。
・西宮市甲子園口駅前の「なかにし楽器店」では、今年の新企画として、8月より「野村祐子講習会」を開始。平日の11時~12時半ですが、楽器店2階サロンにて行っています。今後の予定は、次のとおりです。会場定員が少ないため、ご予約はお早目に。
10月13日11時~12時30分「御茶紀行」
11月30日11時~12時30分「天女の舞」
お問合わせ・申込は「なかにし楽器店」まで。
なかにし楽器店(西宮市)
Tel:0798‐67‐1719

 

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