【326号】うたまくら 春の公演大盛況
春の公演大盛況 野村祐子
平成も残りわずかとなった、4月20日、21日、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(旧名・名古屋市民会館)にての「2019正絃社春の公演」新しい時代へ~語り継ぐ伝統音楽~オープニングは、葛西聖司さんの芸能解説から始まりました。
幅広い日本の伝統芸能の知識を解りやすく解説してくださる司会者に、客席もよい雰囲気が満ちてきます。
「正絃社春の公演に初めて来た人?」
観客の多くの手が上り、
「二百三十八人位の方が、初めてですね。」
「今日の公演では、舞台右側の壁に字幕も出ます。歌の歌詞や解説を御覧になりながら演奏をお楽しみください。」
箏曲の演奏会は初体験のお客様や、知人が出演するので来られて公演の途中で帰る予定のあった方でも、回り舞台の転換に席を立つ暇もなく最後までご覧いただいたと、多くの方から声が寄せられました。
胸が熱くなる数々の舞台を振り返ってみましょう。
整然と並ぶ華やかな舞台
春の公演ご挨拶
【春の公演】初日4月20日
開場前からの受付は、長蛇の列ができていました。
開演ご挨拶
葛西聖司さんの芸能解説で、演奏の見どころ聴きどころを心得えます。
定評ある解説者・葛西聖司さん
「越後獅子」
3列に並んだ三絃奏者に、野村峰山の独奏尺八が入り、格調高い古典で開幕です。
黒留袖のオープニング舞台
「近江夢紀行」
「越後獅子」演奏が終わると、暗転のうちに、上手花道に野村幹人が現れて尺八のソロ。その間に舞台が回り、中心にスポットライトが当てられると箏のソロが浮かび上がり、続いて合奏にと導かれる演出。作曲は3年前ですが、春の公演初登場の曲です。
箏ソロの鈴川悦代さん
「飛騨の里」
岐阜県の民話をもとにした野村峰山作品。
演奏とともに物語を字幕で表示し、解りやすかったと評判でした。
箏ソロの石原未祐己さん
「鯱の城」
本丸御殿公開で盛り上がる名古屋城。
名古屋のシンボルの歴史を綴る野村正峰作品では、舞台スクリーンに城を映し出して、ムードを盛り上げました。
赤く燃え上がる城
「虹の舞曲」
演奏しながら回る演出で舞台が転換し、重々しい「鯱の城」の曲想から、明るい虹色の洋装に一転、未来へ夢を繋ぐ演奏でした。
演奏しながら舞台転換
「花かげ変奏曲」「夢はマーチにのって」
ちびっ子の舞台は何といっても大人気。芸能解説者・葛西聖司さんも、ちびっ子紹介に大奮闘。
「学校の教科は何が好き?」
「算数!」
「ええ~っ、音楽じゃないの?」
子どもたちの意表をついた答えも楽しいインタビュー。
「春の海・21」
水野利彦作品冒頭は力量の必要な十七絃ソロ。静岡県から参加の玉置千鶴社中のホープ・日吉章吾さんは回り舞台が暗転で回るその中、さらに暗闇の中からセリ上がり。
十七絃ソロの日吉章吾さん
「幻想の森」
曲名に合わせた幻想的な照明に華やかなカラーブラウスが浮かび上がり、中間列は立って演奏。箏の演奏スタイルは、通常、座奏(正座で演奏)、立奏(椅子で演奏)があり、この他に、立ち演奏(こちらを立奏と呼ぶべきなのかもしれない?)のスタイルは現代ならではの演奏法。
立ち立奏
地唄舞「寿」
地歌舞・山村楽乃師範が手にする舞扇は、「師匠の山村楽正から譲り受けたもので、「細雪」などの文学作品で知られる作家・谷崎潤一郎氏の自筆の扇です。」と葛西さんの説明。客席は舞扇に書かれた「寿」の文字に注目しました。
地歌舞・山村楽乃さん
「さんずい」
ユニークな題材で作曲する小田誠さんの共演に、客席も興味深々。
小田誠さん
「蒼き神殿」
それぞれ尺八家、箏曲家を親とする二世3人の演奏は、DNAのなせる技でしょうか、伸び伸びとした音色を披露しました。
尺八界の未来を担う若手尺八家たち
「古都絢爛」
前の曲からの舞台転換も見せどころ。
沈黙の中に響く風の音。舞台スクリーン一面に雪が降る情景は幻想的に、その中を後ろ姿から転換する回り舞台。春の公演第1日目のフィナーレを飾る舞台でした。
雪景色の中、転換する回り舞台
終演ご挨拶
「春の公演」初日の終演ご挨拶では、「正絃社の絆を支える野村正峰夫人、秀子さんです」
と、葛西さんの想定外の紹介に、笑顔で立ち上がる野村秀子先代家元夫人。
野村秀子先代家元夫人
アットホームな正絃社の雰囲気で幕を閉じる初日でした。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
【春の公演】2日目4月21日
会場開館と同時に入場した出演者は、荷物を楽屋に置くよりも先に舞台に集合。「回転木馬」のリハーサルはいかに…。
座席はわかったかな?
虚無僧のコスプレ準備の新海游山さん
皆さん、準備はできましたか?
みんな伏せて!
虚無僧と犬とコナン君
最後のポーズを決めて!
動物コスプレチーム
「松の双葉に」
若手男性箏曲家・本間貴士さんの古典「八千代獅子」に導かれた祝儀曲で開幕。
「月の船」
目黒教室を主体とする関東エリアチームの華やかな合奏を見守る如く、舞台奥には三日月が昇りました。
「白秋に寄せて」
石垣征山さんの尺八のソロで、舞台は転換し、楽章ごとに照明が変化して演奏を盛り上げる。
「虫の音の手事」
岐阜正絃社が一丸となった合奏には、若手尺八家のなかでお兄さん的存在の川村葵山さんが皆をまとめる存在感。
川村葵山さん
「愛と祈りの調べ」
「アメイジング・グレイス」など国境を越えるメロディに客席も和やかに。演奏後は、立ってお辞儀する若々しい姿。
「古城の旅人」
異国を思わせる曲想を、意外にも和装での演出。箏の合奏が始まってしばらくすると、どこからか尺八の音が…、セリ上がる舞台にいっそう映える長身の石垣征山さん。
「ふるさとの風」
回り舞台が回りながら箏ソロの演奏が始まり、舞台の中央のセリが徐々に上がって津田眞知子さんが登場。それぞれの曲名が字幕で紹介され、親しみやすいメドレーに客席も心落ち着くムード。
セリから上がる津田眞知子さん
「天女の舞」
舞台が回り転換する間、子守唄が流れて天女の羽衣伝説を字幕で解説。「天女の羽衣は千束千把の藁の下」と子守唄が終わると、空へ向かって羽衣がふわりと飛んで、どよめく客席。
宙を舞う羽衣
「観音の里」
一糸乱れず社中全員の暗譜演奏で、豊かな曲想を表現する土井澄子一門による演奏は、今秋、某TV局の番組に放映の予定。番組名公開は後ほどのお楽しみとさせていただきますが、ぜひ、ご覧いただきますようお願いいたします。
土井澄子社中
「星合いの夜に」
ゲストの作曲者・水野利彦先生との共演曲に、「黒の衣装」との申し合わせの出演者は、舞台スタッフ(原則、黒のスタイル)と間違えられないようにセンスの良い、それぞれの衣装。
緊張のメンバーを和ませる水野先生に、家元も応援のエール。
「而今謌」(じこんか)
異色の若手作曲家・本間貴士さんと、水野利彦先生、家元、野村幹人の異色の共演舞台では、迫力の演奏に、客席も水を打ったような静けさ。
迫力の舞台
葛西聖司さんのインタビュー
「尺八の長さは?」に応えて、長さの違う尺八を並べてご披露。
「回転木馬」
久々の「回転木馬」では春の公演フィナーレを盛り上げる祝祭・カーニバルをテーマに自由な衣装で出演。舞台を彩る着物、ドレス、コスプレの数々を、誌上にてお楽しみください。
- 2019.07.01
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