【330号】非常事態のなかで - 正絃社

【330号】非常事態のなかで

非常事態のなかで     野村祐子 

 振り返りますと、今年2月16日、滋賀県米原市の滋賀県立文化産業交流会館にての邦楽専門集団「しゅはり」&邦楽専門実演家養成事業受講生による充実した演奏会が終了し、ほっとしていた、その後から世の中の急展開が始まりました。
翌週23日、愛知芸術文化協会(ANET)と名古屋市文化振興事業団の共催による《文化小劇場巡回シリーズ》によるコラボレーション公演「ハムレット奇譚」(東文化小劇場)に出演する正絃社数名も参加しての合同リハーサルの最中で、中国発症の新型コロナウイルス感染が広がっていることが話題になりました。

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平和ななかで開催された2月の「しゅはり」&養成事業受講生公演

 その時は、コロナウイルス感染への名古屋市の警戒レベルは「3」で、警戒レベルが「4」に上がるとイベントは中止になると聞き、「まだ、大丈夫だね。」と、皆で頷き合って、稽古に励んでいました。

 週末の29日には、同じ共催コラボレーション企画「うたの祭典」公演(瑞穂文化小劇場)があり、出演する正絃社合奏団も楽器の準備などに忙しいはずでしたが...。
「ハムレット奇譚」リハーサル翌日の23日には、3月に公演を控えた同じコラボレーション企画の別団体が、公演延期を提言し、これに引き摺られるようにして、29日開催の「うたの祭典」を急遽、中止。「ハムレット奇譚」公演も中止を決定。
 後に延期日程が決まるのですが、これまでに経験したことのない事態が次々と知らされる毎日でした。  
 このような大規模なイベント中止の状況と言えば、2011年3月11日、あの東日本大震災が思い起こされます。

 被災地が東日本でしたので、中部地域での影響はさほど多くなかったのですが、正絃社でも震災発生の翌4月に「春の公演」を控え、迷いましたが開催としました。東北地域の会員へは支援物資を送り、支援プロジェクトを行ったり、また、他の被災地支援のイベントにも参加するなど、微力ながら応援をしてまいりました。
 未だかつてない大災害とはいえ名古屋から被災地へは遠く離れているので、気持ちにも余裕がありました。

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2011年秋、東日本大震災後の「東北を励ます会」

 しかし今回は、都市部での急激な感染拡大を食い止めるため、イベント自粛要請が出されておりコンサート、講演、それに伴うリハ―サルなどすべて中止。イベント中止による入場券払い戻しに際しては、既に出費しているであろうイベントの経費はどうなるのか心配しました。学校の授業、文化センターなどの習い事も、もちろん中止。外出自粛によりお稽古もお休み。マスク、消毒液、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどの不足、負の連鎖へと発展していくので、何事にも疑心暗鬼になってしまいます。
 志村けんさん、岡江久美子さんのような、多くの人に慕われた有名な芸能人が亡くなられたことも大変なショックでした。卒業式、入学式という人生の記念日も中止。
 倫子補佐の発案で、正絃社から演奏ビデオの配信を開始。普段のお稽古ではフルパートの合奏がなかなか揃わない曲を、第一箏抜きで撮影し、毎週火曜日、金曜日にユーチューブにアップ。東京目黒の哲子家元補佐教室では、オンラインお稽古でリモート合奏、スマホ、PCに馴れている若者層は機器への対応がよいようです。
 卒業式、入学式を迎える方への「晴れの日に」(野村正峰作曲)、元気の出る「夢はマーチにのって」、野村峰山の尺八で合奏の「春の海」「岬の灯台」など明るい曲を選曲。多くのオリジナル曲からの曲選び、時には仮装も入れ、ソーシャルディスタンス、尺八防御アクリル板設置など録画も懐かしい思い出になっております。

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合奏のビデオ撮り

 4月に入り、ついに「非常事態宣言」が出され、ますます自粛要請が強められて社会経済活動は滞り、観光地や繁華街も閑散、各地で倒産が相次ぎ、長年の老舗も廃業されるなど生活が脅かされていきました。
このような社会状況に堪りかねて、各種芸術団体から政府にフリーランスで活動する業界人材への援助はじめ、いろいろな助成の要望が出されました。日本政府の対応は、マスク、支援金など配布状況を見ても、諸外国に比べて遅いのは明白です。
 このような中で、野村峰山と私の受賞がありましたのは、今後の励みとなるささやかな喜びでした。コロナ収束を願い、皆様にあらためてご披露できる日を考えております。その折には皆様とともに喜びを分かちあいたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 この私たちの日本を立て直すために、皆で繋がって前へ進もうではありませんか。
 皆で頑張りましょう!

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