【333号】うたまくら コロナから前進へ - 正絃社

【333号】うたまくら コロナから前進へ

コロナから前進へ   野村祐子

 再びの緊急事態宣言に、自粛の日が続きましたが、その成果とワクチン接種の浸透で状況はよい方に向いているようです。私たちも、少しずつでも前進したいと意欲高揚に努めておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
多くのイベントが中止され、空しい日々が続いていますが、窮地の中で開かれた知恵もあり、私たち人類はどんな事態にも立ち向かって生き残ることができる、素晴らしい存在とあらためて思いました。
 さて、困難を前進へのエネルギーに変えるプラス思考で今年を乗り切るために、昨年のコロナ禍のなかで進化、変革したことを振り返り、次へのステップを探ってみたいと思います。

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毎日新聞に掲載されました

・ビデオ配信の普及
 緊急事態宣言によるお稽古休止。そこで、正絃社では、自粛でお稽古に通えない会員を励ますため、野村倫子が「ビデオDE合奏」の映像を収録、ユーチューブ配信を開始。  
普段なかなかパートが揃わずフルスタイルの合奏ができない合奏曲などを、第1箏抜き(ビデオを見る人が弾くため)の合奏で収録し、緊急事態宣言中に毎週、配信を継続しました。
 東京・目黒教室の野村哲子からも同様に、お稽古ビデオを配信。演奏画面には、思い出の写真を入れこむなど手の込んだ画像で、感慨深いシーンの数々に会員からは感嘆の声。オンラインでのレッスンも始めました。

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ビデオDE合奏「春の海」

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メヌエットでダイエット?

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おうちでクリスマス

・リモートの数々を習得
 私が箏の講義を受け持つ大学からは「箏の授業をオンラインで」との依頼。対面なしの実技は困惑しましたが、演奏ビデオをユーチューブに配信する妹たちに刺激され、まずはデジカメを購入。「箏曲小曲集№1」全曲の説明と演奏を収録して大学のオンライン授業に配信。
 三絃の授業用にも「三絃小曲集」を収録。自宅に楽器のない学生が、少しでも楽器に触った気分を味わえるよう工夫し、大学のリモートシステムに順次、掲載。5月の宣言解除まで、お稽古ができなくなって空いた時間は、このビデオ撮影に忙しく、オンラインアプリのパソコン操作に四苦八苦の毎日。
 おかげで「オンライン飲み会」「ズーム会議」などにも慣れ、後述の長栄座公演では東京と米原を結ぶリモートリハーサル、また、いつもは新年会でご披露する免状授与式も、オンラインで執り行いました。

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箏曲小曲集ビデオ

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三絃小曲集ビデオ

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オンライン飲み会

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オンライン免状授与式

・ナマの舞台の有難さ
 皆が集まることができないので、行事をビデオで行うためビデオ制作が多くなりました。
 うたまくら前号で紹介した、無観客ビデオ収録「阿吽~ハムレット奇譚」公演、名古屋市によるナゴヤ文化芸術活動緊急支援事業「ナゴヤ・アーティスト・エイド」(野村正峰遺作「千樹万葉」を掲載)、やっとかめ文化祭(「愛と祈りの調べ」)、後述のきみのあしたプロジェクト(「名古屋城天守物語」)など、多くのビデオ撮影を経験しました。
 正絃社でも幹部会行事の「秋の研修会」や「新年総会」の代わりに「合奏会ビデオ」「ビデオで新年会」を制作。
 無観客のビデオ撮影用演奏では、演奏を受け留めてくれる相手が目の前にいないので、これでよかったのか、と充分な満足感のないまま終了します。観客を前にした舞台で、直に演奏を聴いていただき、客席の反応、空気を肌で感じ、拍手をもらえる・・・、普段の当たり前の発表の場が、つくづくと有難く感じられます。

・コンサートの感染対策
宗次ホールスイーツタイムコンサート、大阪の菊重精峰社中「峰の会」、民謡尾八会など、コロナ感染対策のなかで開催されたコンサートは、今後の人生のなかでも思い出深い体験と思います。
手指の消毒はもちろん、マスク着用、客席はソーシャルディスタンス、入場券のもぎりは各自、プログラムも各自で取り、楽屋も密を避けお互いに近寄らず、挨拶は黙礼。
宗次ホールでは舞台上はマスクを外しましたが、峰の会、尾八会、名古屋城物語では舞台でもマウスシールドを着用。客席は飛沫感染防止のため、声一つなく、その代わりに惜しみない拍手で応えてくださり、客席と繋がる感動を感じました。

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距離を置いて記念撮影の宗次ホールコンサート

・レコーディング
 一昨年前から計画していた新作CDレコーディングを名古屋芸術大学の協力により、昨秋、決行。広い演奏会場は換気もよく三密にもならず、感染対策のうえ、6曲を収録。
現在、準備中で、近々、発刊の予定です。(曲目は後述)コロナ禍のなかでの思い出深い収録曲を、ぜひ、お聴きいただきたいと思います。

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マスク着用

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合奏は対面で

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野村幹人も活躍

・NHKFM放送・TV放映
 昨年7月のNHKTV「にっぽんの芸能」には、コロナ禍のために一昨年の「箏曲家・野村正峰の世界」が再び取り上げられ、嬉しい再放送。秋になり、9月のNHKFM放送「邦楽のひととき」(古典)には、「新浮舟」(三絃・野村哲子、箏・野村祐子、尺八・野村峰山)、今年1月の「邦楽のひととき」(現代邦楽)では、「花二題」(第一箏・野村倫子、第二箏・菊央雄司、尺八・永廣孝山)が放送されました。
 そして6月には「邦楽のひととき」(古典)にての「桜川」をぜひ、お聴きくださいますようご案内させていただきます。

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透明のシールド板設置「新浮舟」収録

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NHK大阪スタジオでの「花二題」収録


・創作活動
 私の新作で昨年の発刊は「編曲長唄元禄花見踊」だけとなりましたが、「阿吽~ハムレット奇譚」公演の挿入歌、「名古屋城天守物語」公演での長唄・常磐津曲の手付、今年5月の「源氏物語~美神降臨」伴奏曲などの創作・編曲を行ってきました。今年の長栄座公演にても大作を用意しております。
 しかし、新元号「令和」の記念に、「編曲長唄元禄花見踊」に対して「令和花見踊」の構想も温めているのですが、なかなかまとまりません。
 コロナで鬱々とするなか、気分転換にお稽古を楽しめるように何か、と思いつつモヤモヤしているところ、これでは会員の皆様へ申し訳ないと、野村倫子が立ち上がり、手軽に弾ける「箏曲小曲集」の続編をただ今、編纂中。自粛のなかでもお箏を楽しめるよう、皆様のお手元に一刻も早く届けるべく奮闘しておりますので、どうかしばらくお待ちくださいませ!
 ワクチン接種、コロナ収束まで、皆様のご無事と健康を願い、自由に文化活動ができる日が来ますよう待っております。

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