【335号】うたまくら 一歩前へ踏み出そう
一歩前へ踏み出そう 野村祐子
このコロナ禍のなかで果敢に演奏会を開催されるお便りが、各地から届くようになった矢先にまた、緊急事態宣言、まんえん防止等重点措置が出され、苦しい日々が続いています。
劇場、コンサートホールなどでの感染防止対策では、マスク、消毒、検温、記名入館、おしゃべり禁止、客席数半減が日常になりました。
コロナ禍のためにイベントが中止された日々を思うと、感染防止対策のもとでも鑑賞ができることは喜びですが、感動を心の奥底に押し込んで、客席からそっと退場する、感染対策の心苦しい鑑賞マナーから早く解放されたいものです。
熱演に応えようと、観客は一生懸命に拍手を送りますが、いつもなら「ブラボー」「〇〇屋」などと大向こうからのかけ声が禁止されているので、演者も反応のない客席にモチベーションが下がることでしょう。でも、しんと静まりかえって鑑賞に集中する客席の空気も、またそれはそれで良いのかもしれません。
ところで舞台と客席のその関係は、プロ、アマチュアを問わず、舞台に居るのは演奏者(観られる人)、客席は鑑賞者(観る人)です。
演奏会を前にすると、「私は下手だから、こそっと弾きます・・・」と言われるかたがあります。
舞台にでるからには、〝私は世界一上手だからしっかり聴いてね〟という心意気で、たとえ自分の腕前に何らかの自覚があっても、聴いてくださる人に対しては精一杯の演奏を御披露したいものです。せっかく会場へ足を運んでくださったお客様に、自分ができるかぎりの演奏で『お持てなし』をするのが、舞台へ乗る人の心得でありたいと思います。
また、「上手になったら演奏会に出ます・・・」と言われるかたがあります。
何百何千回もの練習も大切ですが、それよりも、1回でも多くの本番の舞台に出る経験が、普段のお稽古では得られない勉強をもたらせてくれます。舞台での緊張感、マナーなど、普段の練習で足りなかったことを実感して、また新たな勉強の目標ができるのが舞台出演の醍醐味です。
普段のお稽古だけで上達することを待っていたら、いつまでたっても演奏会に出ることはないでしょう。演奏会に出るのを躊躇っているかた、コロナ状況が良くなった折には、勇気を出して、一歩前へ踏み出してくださいね。
- 2021.10.03
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