【317号】うたまくら 日本の歌を大切に
日本の歌を大切に 野 村 祐 子
近年、俄かに学校での授業では、和楽器の演奏だけでなく、和楽器に伴う歌が必須となり、音楽大学の教職課程でも当然ながら、「和楽器」だけでなく「歌」が必修課目に取り上げられてきています。
オペラや西洋歌曲を歌いこなす音大生は多くいますが、地歌や長唄、小唄のように三味線で伴奏される多くの歌や箏歌はじめ、日本の民衆の歌とも言うべき民謡などの、本来ならば日本人の骨格にあった発声で、日本語の発音やコブシを生かした歌を学ぶ機会は、長年の音楽教育のなかでも多くはありませんでした。
富樫教子先生芸歴90年の会にて藤本昭子先生とともに
明治開国以来、西洋音楽一辺倒で、日本の伝統文化が置きざりにされてきた日本の教育方針にとって、大きな転機と言えるのではないでしょうか。
自国の言葉を大切にすることは、自分自身を表現するために必要なことですが、それにしても日本語はたいへん表現力の豊かな言語です。
この日本語の良さが解る本としては、「日本語」(岩波文庫・金田一春彦著)がお勧めです。日本語の特徴を知り、歌の節回しに生かせたら、歌のお稽古が楽しくなるのではないかと期待しております。
また、日本の伝統の歌を通して、日本の伝統文化を大切にし、古来、培われてきた日本の礼儀正しい慣習や社会のマナーなどを身につけることも、必要なのではないかと思います。
古典の歌には、内容の理解しにくい歌詞や、母音を長く伸ばす歌い方が多く、なかなか親しみにくい曲が多いのですが、正絃社のオリジナル作品は、幅広い文学作品や、現代の題材の歌詞から、若い世代の方々にも馴染みやすい旋律にのせた歌曲です。曲の題材から得る知識も勉強のひとつとなります。
心が癒される音楽、学ぶことが実となる邦楽曲を、邦楽に親しみのない方々にも知っていただき、音楽で繋がる心豊かな人の和が、大きく大きく広がることを願っております。
- 2017.04.09
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