【324号】うたまくら 新しい時代へ 伝統の音色を繋いで
新しい時代へ
伝統の音色を繋いで 野村祐子
新年おめでとうございます。
私たちは、64年の昭和時代から平成へ、そして30年の平成時代から新元号へ、新しい歴史が始まるときを迎えています。
今年4月の正絃社「春の公演」も平成最後の公演で、さらに建替え予定の現在の名古屋市民会館での最後の開催となりますが、今後も邦楽の発展に全力を尽くして参りたく存じます。
2002年施行の学習指導要領による学校教育への和楽器導入により、近頃ようやく、教育現場や三曲団体と地域の行政による文化振興政策、文化庁による伝統文化の振興政策などが多く見られるようになりました。
私が携わる音楽大学の授業でも、僅かな回数の授業ですが、西洋音楽一辺倒であった学生たちが、物珍しそうに箏や三絃に触れています。楽器を通して日本の伝統文化への目を開き、なかには日本人ならではの感性に興味を持つ学生もいます。
最初の授業では、恥ずかし気な挨拶しか言葉を発しなかった学生たちが、学期末の授業を終えるときには笑顔で、「もっと箏を弾きたかった」「楽しい授業だった」と、名残惜しそうに去っていくのを見ると、伝統の音色は人と人を結び、心を繋ぐものと確信しています。
「御園座」にての地歌舞
音楽は情操教育と言われます。箏のお稽古で培われるのは音感ばかりではなく、相手を敬う心、礼儀、忍耐心、感動,仲間との協力など、情のある人の心を育てる日本伝統の教育法であると思います。大学で箏や三絃を学んだ若者たちが、単に曲を弾くだけではなく、日本の伝統文化に託された心を感じ、いつか、「日本の伝統文化っていいものだね」と思い出してくれたら、と願っています。
また、先月は「楽音会」の依頼で大阪にて、学校などで校歌や皆が知っている曲を箏で弾くため、五線譜から箏曲譜への翻訳について講習しました。洋楽を箏曲に編曲する際に、ただ単に五線譜から箏譜へ音を移すだけではなく、箏の音色や手法を生かしたアレンジや、調絃、音域の選び方、独奏、二重奏、三重奏の組み合わせ例などを紹介し、そのためには楽理の理解が重要であることを強く感じました。
邦楽を学び、より幅広く活躍するためには演奏力を養うばかりなく、広い視野が大切です。皆様に幅広い内容を、より楽しく学んでいただくために今後とも努めてまいります。
今年もよろしくお願いいたします。
- 2019.01.19
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