【305号】「野村正峰作品展」受賞にあたり/野村祐子
市民芸術祭授賞者
父の創作活動は、昭和39年、処女作「長城の賦」発表以来、オリジナル作品約二百曲、編曲を加えた楽譜出版数は、箏譜、三絃譜、尺八譜合わせて、およそ四百冊に及んでいます。
周知のとおり父の作曲理念は、江戸時代から伝承される地歌が描く遊里の内容を離れ、歴史、文学や四季の風物などを題材とし、格調高く叙情的な旋律 を求め、現代に生きる人々に親しみやすい曲想。大ホールでの大勢の合奏を生かすために、箏、三絃、尺八に低音の十七絃を加えた、厚みのある合奏曲が多いの も特徴です。
従来の箏曲作品には少なかった大合奏の魅力、また一方では、日常、気軽にお稽古に役立つ小品も、楽しい旋律で描かれ全国の津々浦々に浸透しているのも事実。実際、全国各地から送られてくるプログラムには「花かげ変奏曲」「夕やけ小やけ変奏曲」「日本のわらべ唄」などの小品から、「篝火」「宮城野」などの中編成の曲、「春の歳時記」「五丈原」「美吉野」など大編成の曲が、流派を問わず取り上げられているのです。
父の亡き後は、このように名古屋から創作活動を全国の三曲界に広め、邦楽発展に尽くした父の業績と、戦後の荒廃した時代にゼロからこの道を切り拓いた父の道のりに、あらためて思いを馳せる毎日でした。
2011年「春の公演」の舞台より
今回のコンサートでは、父の作品のなかから音楽専用のコンサートホールに似合う曲を、じっくりとお聴きいただきたいと計画を練り、昨年10月18日、しらかわホールでの「野村正峰作品展」の開催に至りました。
没後はやくも三回忌となる機に、幹部会員の中から選抜出演の一〇五名が心ひとつに、「野村正峰作品展」が開催できましたこと、出演の皆様、ご鑑賞くださった皆様、またお力添えいただいたスタッフの方々に深く感謝申し上げます。
授賞式にて
(左より倫子・津田・
祐子・土井・野崎)
高い演奏技術を目標に掲げて練習を重ねましたが、技芸は一朝一夕には磨かれるものではありません。日常の積み重ねの大切さを改めて感じました。とはいえ、高い目標を持つことで、練習の意欲や内容が濃くなり、実力が身についたように感じております。この勢いにのって、来年の正絃社創立五十周年「春の公演」に向って突き進みたいと思います。
これからも心に響く演奏を目指し、ご支援いただく皆様とともに精進してまいりたく存じます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
- 2014.03.26
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